行き過ぎた円安。購買力平価から円安の限界を探る

それにしても最近の円安は急激です。
一昔前までは円安は日本経済にとってメリットが大きく、円高よりも円安を望む声が多かったわけですが、昨今は状況が変わってしまいました。
円安になっても日本経済にはメリットがなくなりつつあります。いったいどうしてなのでしょうか。
円安は行き過ぎなのか
円の価値は決める要因はいくつもあるでしょう。人によって考え方はそれぞれだと思います。
小生は長期的には円の価値は外国通貨と比較した購買力平価に収れんしていくのではないかと考えています。
では現状はどのような状況なのでしょうか。

購買力平価は「消費者物価」「企業物価」「輸出物価」の3種類で計算されています。そして、過去の傾向から以下の傾向があると考えられます。
・消費者物価指数まで円安となることはまずない。
・輸出物価指数まで円高となることはまずない。
・企業物価指数を仲値と考えることができそう。
・輸出物価指数まで円高となることはまずない。
・企業物価指数を仲値と考えることができそう。
現状、消費者物価指数を大きく上回る円安水準となっており、円安は行き過ぎていると見ます。ただ、円とドルとの金利差が開いているため、早々に円高に戻ることはなさそうです。
かといってここからさらに130円を上回る円安は考えにくいというのが小生の勝手な見立てなのであります。いずれこの反動が来るのではないかと思います。
円安になれば株価は上がるはずだったが
ところで円安が進んでも株が上がらない。今までのセオリーが通じません。
いったいなぜなのか?それは工場が海外に移転してしまったからだといえそうです。
以下は製造業の海外現地生産比率の推移です。

(出所:内閣府)
もはや加工型の製造業にいたっては3割以上が海外の現地工場で生産されています。
だから円安になってもメリットはない。だから株価も上がらないという図式が成り立っているわけです。
アメリカ株に投資しているのでOK牧場!
また別の要因も日本の株価に逆風を吹かせています。
今はネットでアメリカの株も簡単に買えるご時世です。若い世代ほど、日本の株式には見切りをつけアメリカ株に投資している。
円安になれば輸入物価が上がり、インフレになる。しかし、アメリカ株を持っていれば円安により円建てでの資産価値は上がるのでインフレヘッジになります。
NYダウは2022年初頭を天井として幾分下落していますが、円建てで換算すれば最高値近辺に張り付いています。
株高に円安が加われば一粒で二度おいしいっていうわけなのです。
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企業の弱気はデフレが原因
昨今の急激な円安は日本のデフレが常態化しているという面も大きいと思われます。
企業物価指数が上昇しても、消費者物価指数が上昇しない。消費者に値上げを求めるのが難しいのが今の日本の現状です。
日本では企業物価指数と消費者物価指数との差が8.8ポイントありますが、アメリカは2.1ポイントしかない。
企業が物価上昇の負担を負っており、これが企業業績を圧迫する。株価にも逆風が吹くというわけです。
求人までも低調に推移
企業の儲けが伸びないから求人も低調となる。
欧米の求人倍率はコロナ騒動前を上回り、1.2~1.6倍程度と売り手市場となっています。当然賃金は上昇しますから、インフレになっても吸収できる。
ところが日本は今だコロナ騒動前を10%程度下回る水準であり、賃金上昇圧力も小さい。
だからデフレ傾向からいまだに脱却できないという悪循環を繰り返しています。
財務省の悪だくみ
日本経済の超長期的低迷はひとえに財政均衡至上主義を掲げる財務省にあるといってよい。
そして早くも増税を企んでいるというのですから思考回路がおかしいとしかいいようがありません。今年(2022年)7月に参議院選挙があるわけですが、それが終われば3年間、国政選挙の予定はない。
ある元財務官僚が言っていました。
もし、自分が財務官僚だったら、3年間の無風期間があるから増税のチャンスだと政治家に吹き込むと・・・。
元財務官僚が言うのですから信ぴょう性が高い。財務省は夏以降、コロナ増税を打ち出してくるに違いない。自民党安定政権になれば必ずやってきます。
7月の参院選の結果で日本は大きく振れる可能性がありますので要注意です。
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