モノは作れば必ず売れるという幻想。セイの法則

数学

高度成長期はモノが需要が旺盛であり、なんでもかんでも作れば売れた時代だったといえます。

そのような時代には「セイの法則」は正しいと感じられたのかもしれません。

しかし、1990年代後半以降、モノを作っても売れない、そして値段はひたすら下がるというデフレ時代に突入しました。

セイの法則はもはや虚しく、偽りの法則であることが白日のもとにさらされたといってよいでしょう。まさにこの日本でです。






セイの法則とは


セイの法則の名称の由来はフランスの経済学者であったジャン=バティスト・セイの名前によるものです。

セイは1767年生まれであり、この法則は今から約200年前に提唱されたものです。

その内容はかいつまんでいえば、供給はそれ自身が需要を創出するというものです。

供給がまずあり、それに合わせて需要が決まっていく。需要が大きければ値段が上がり、小さければ値段は下がる。しかし、供給すれば価格メカニズムによって必ず需要が発生するという考え方です。

労働市場にセイの法則の虚しさを見る


セイの法則を労働市場に当てはめて考えてみます。

労働者は労働の供給者であり、企業は労働の需要者となります。

セイの法則に従えば、労働者によって提供される労働はそれ自身が需要を創出するのですから、その需要の大小による賃金の高低はあれど、原則として失業は存在しないことになります。

想定されるのは、高い賃金を求めてあえて働かないような自発的失業者の存在だけであり、働きたいのに働き口がない非自発的失業者は存在しないことになります。

肌身感覚でおかしいのではないかと首をひねらざるを得ません。

失業率の推移


セイの法則が正しければ失業率はほぼ一定レベルに収まるといえます。働きたい人には賃金の差こそあれ、必ず門戸が開かれているはずだからです。

しかしながら実際の失業率の推移を見ればおかしいことがわかります。

以下は1980年からの日本の失業率の推移です。

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(出所:ニッポンの数字)

時期によって失業率は大きく異なることがわかります。

普通に考えて自発的失業者は自殺しないでしょう。なにしろ自分の意思で失業しているのですから。

働きたくても働き口が見つからず、経済的な困窮に陥った人が自殺するのが通常だと思います。

以下の自殺者数の推移を見ればそれは明らかです。

20220518jisatushasuu.jpg
(出所:ニッポンの数字)

失業率が高くなると自殺者が多くなる、明らかに正の相関が見て取れます。

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需給ギャップという言葉の存在


そもそもセイの法則が正しければ需給ギャップなどという言葉も存在しないはず。

しかし、厳然と需給ギャップは存在しています。

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(出所:日本銀行)

需要が供給を下回っている1990年代半ば以降、失業が増え、自殺者も増えていることがわかります。

セイの法則による悲劇


セイの法則に従って大失敗をしたのが世界恐慌時のフーヴァー大統領です。

自発的失業者が大量に増えているのは高い賃金を求めている労働者が多すぎるからだと考えたのです。そして、政府の実体経済への関与はなるべく少なくし、自由化を進めることで事態を打開しようとしました。

しかし、当然のことながらそれはうまくいかなかったのでした。

供給自体が需要を生み出すことなどありえない。日本はいまだ供給が需要を上回る需給ギャップが埋まりません。

それを埋めるのは政府による財政支出と、民間投資や消費を促す減税であるのは火を見るよりも明らかなのです。

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