日本を安定成長に戻すための公共事業額は簡単に試算可能なのだが

日本経済が1990年代以降、長期のデフレに苦しみ経済成長に急ブレーキがかかっていることは誰しも知っています。
民間消費、民間投資は委縮し守りに入っています。そんな中で政府ができることは財政拡大と減税による需要の拡大であることは明らかです。
今回は財政拡大に目を向けてみます。
日本政府は本当に必要な手立てを講じてきたのでしょうか、あるいは講じているのでしょうか。
ゆでガエル的貧困化
今や実質的な豊かさを示す一人あたり購買力平価GDPはお隣韓国にも抜かれてしまいました。
それもそのはず、日本と韓国では経済成長率がまるで違うのですから。

(出所:世界経済のネタ帳)
日本人は急激に貧乏になっています。横並びで貧乏になっているために気が付いていないだけで、他の先進国から見れば日本人は確実に貧乏に見えるはずです。
伸びない個人消費
個人消費は委縮しています。
1990年代に入り、ほぼ横ばいを続けており、年によってはマイナスに沈んでいます。ゼロ成長だと考えてほぼ差し支えないと思います。

(出所:内閣府)
当たり前の設備投資抑制
消費が増えないのだから、企業は設備を投資しても仕方がありません。
むしろ、設備は余ってしまい遊休資産が増大してしまったといえます。以下は民間設備投資の推移です。

(出所:ニッポンの数字)
1990年代以降、多少のうねりはあるものの傾向としてはまったく増えていないといえるでしょう。個人消費と同じくゼロ成長だといえます。
かつての面影なし。貿易収支
貿易収支はどうでしょうか。

(出所:世界経済のネタ帳)
2010年あたりまでは黒字を保っていましたが、超円高の影響で企業が海外へ逃げてしまったこと、また昨今の資源高などの影響で、日本は今や貿易赤字国に陥ってしまいました。
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GDPを伸ばす鍵
国の豊かさを表すGDPは以下の数式で表されます。
GDP=消費+投資+政府支出+貿易収支
このうち、消費、投資、貿易収支はほぼ横ばいでゼロ成長と考えて概ね問題の無いレベルです。
残るは政府支出です。
GDPを伸ばすには政府支出がキーファクターとなるわけです。
最後の消費者
国民が貧困化しないレベルの経済成長は年率3%前後ではないでしょうか。
その3%成長の鍵を握るのは財政拡大による公共事業ということになります。
現状、日本のGDPは550兆円前後です。3%成長を目指すには17兆円ほどのGDPアップが必要です。しかし、政府支出以外は期待できません。
17兆円の経済成長を目指すにはどの程度の公共事業が必要となるのか?
これは実に簡単に計算できます。
成長のために必要な公共事業費
GDPの増加額=1/(1-限界消費性向)×公共事業の増加額
この式によって、17兆円GDPを増やすには公共事業をどれだけ増やせばよいかがわかります。
現状、日本の限界消費性向は約0.3程度と考えられることから、各数値を代入すれば必要とされる公共事業の増加額(X)がどの程度かを推し測ることができます。
17兆円=1/(1-0.3)× X
17兆円=1/0.7×X
1.43×X=17兆円
X≒12兆円
過去の実情を見れば低成長は必然
日本が安定的に成長するには公共事業を年間12兆円ほど増額する必要があると推計できます。
そして、成長すればするほど、さらにその金額は増えていくことになります。行き過ぎたインフレになるまでは継続しなければ意味がありません。
では実情はどうだったのでしょうか。

(出所:社会実情データ図録)
1998年をピークに右肩下がり傾向が続きます。
そして経済成長を維持するレベルをひたすら下回る。これでは日本が成長軌道に乗らないのは当たり前です。
こんなにも単純にわかることが実行されたかったから日本は長らくデフレに悩まされてきたことは間違いありません。
コロナ禍で一時的に財政支出が拡大しましたが、今後その反動で、減らされていくことが予想されます。
増税すら考えられるのですから目も当てられない。これでは日本経済の低迷が続くだけです。
民間需要が活発化しない限り、政府は毎年少なくとも18兆円以上の公共事業を行っていく必要がある。実に単純な算数なのであります。
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