日本は円安になっても良い理由。生産能力から考える

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2022年に入り、急激に円安が進行しました。

ただでさえ資源価格が高騰しているところ、円安になればさらなる輸入物価の上昇になってしまいます。というわけで、円安には警戒感も出ているのですが、日本の場合はこの程度の円安であれば概ね問題がないと考えます。

警戒すべきは短期的な急変動です。徐々に変化していくならば企業も対応がしやすいですが、急激に変化すると対応が追い付きません。

業績にも影響が出るし、戦略の変更も短期間で練らねばならず失敗する可能性が高まります。

ではなぜ日本は円安になっても問題ないのか検証してみたいと思います。






レバノンの苦境


ところで2020年3月、レバノン政府は外貨建て債務の支払いができなくなり、財政破綻しました。

レバノンは相次ぐ内戦で国内の産業は大きく傷つき、産業らしき産業もなく、貿易収支は常に赤字・・・。国内の需要を国内の生産力で賄うことができない状態が続いてきました。

通常、このような状態であれば自国通貨はどんどんと安くなっていくわけですが、レバノンは固定為替相場制を採用しておりました。

1ドル=1500レバノンポンドで固定されていたのです。以下はレバノンの貿易収支と経常収支の推移です。

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(出所:世界経済のネタ帳)

必然の財政破綻


貿易赤字がひたすら続くのに自国通貨の価値を同レベルに保てないことは素人でもわかることです。

放っておけば誰もレバノンポンドなど欲しいとは思わなくなるでしょう。ひたすら安くなっていくはずです。とにかく海外からモノを買うにはドルが必要なのです。

固定相場を維持するとなれば、政府はとにかくドルの外貨準備でレバノンポンドを買い支えるしかありません。

しかし、やがて外貨準備も尽きてしまうのは目に見えています。

そうなれば仕方がない。米ドル建て債券を発行してドルを調達するほかありません。しかし、貿易赤字が続くのですから、その返済の原資などあるはずもなく・・・。

レバノンは当然のごとく財政破綻へと追い込まれたのでした。

日本の貿易収支と経常収支


レバノンと日本では何が違うのか。

まずは日本の貿易収支と経常収支を見てみましょう。

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(出所:世界経済のネタ帳)

最近は原発の停止による化石燃料の輸入増加と価格高騰により貿易収支は赤字となることもありますが、サービス収支や所得収支を合わせた経常収支は相変わらず巨額の黒字を維持しています。

レバノンとは違い、日本は国内の生産能力はまだまだ十分に維持されているといえます。

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レバノンになく、日本にあるもの


日本はエネルギーや生鮮食品を除いた物品については依然としてデフレギャップ状態にあり、供給が需要を上回る状況です。

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(出所:日本銀行)

日本とレバノンでは生産能力という点で圧倒的な違いがあります。

レバノンは財政破綻により、実勢為替レートは1ドル=15000レバノンポンドにまで自国通貨は安くなり、輸入物資は超高騰してしまいました。

輸入が思うようにできなくなってしまったのです。

その点、日本は円安になれば輸出企業の競争力が増します。海外へ輸出して外貨を稼ぐことができるのです。

レバノンは自国通貨安で得られるメリットはありませんが、日本にはあるというわけです。

最後に


日本は90年代以降の超円高によって、国内産業が海外へ流出し、雇用不安を招きました。

これを放置したのは黒田日銀総裁以前の日本銀行です。日本銀行の罪は重い。しかし、円安によって日本復活の芽がでてきたと考えることができます。

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