アメリカ、株主資本主義の是正へ微妙に動き出す。やったふり?それとも・・・

アメリカにおける1990年代以降の株価爆上げは株主を徹底的に重視した税制改正や経営にあったことは明らかです。
その一方で所得格差や資産格差は拡大して、富は一部の富裕層に偏在することとなり、社会は少数の富める者と大多数の貧しい者とに分断されてしまいました。
しかし、さすがに株主資本主義も行き過ぎというわけで、その振り子はそろりと逆方向へ戻りつつあるようなのですが本気なのでしょうか。
株価上昇の原動力
アメリカ株はここ30年で約10倍にも値上がりしました。

(出所:世界経済のネタ帳)
株価の上昇は喜ぶべきことですが、その上昇は一般の従業員の給与を抑えて分配を小さくしたことに起因するようです。従業員の給与を抑えた分を増配や自社株買いに回して、テクニカルに株価を上昇させたという感が強くあります。
経営者にはストックオプションが付与され、株価が上昇すればとんでもない報酬が転がり込む。その一方で労働者は働けど働けど給与が増えないといった図式が長らく続いてきたわけです。
そして、アメリカにおける所得格差は確実に上昇していきました。

(出所:社会実情データ図録)
認知の不協和を起こす話
ところで、格差が拡大すれば犯罪は増加するに違いない。そう考えるのは自然だと思います。
しかしながら、株価が上昇した1990年代以降、アメリカの犯罪件数は着実に減少しています。

(出所:社会実情データ図録)
格差は拡大しても、底辺のレベルが上がれば治安はよくなるものと推測できます。
これは意外な事実です。
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底辺への競争からの脱却!?
閑話休題。2000年前半、アメリカの労働分配率は約64%ありました。しかし、10年後には約59%にまで低下しています。
アメリカの富は偏在しており、2021年には上位1%の富裕層が全体の3割以上の富を保有しています。これを支えてきた要因の一つは法人税の世界的な減税競争です。
アメリカの巨大IT企業、アマゾンやインテルなどは法人税を13%程度しか納めていないと推定されています。
そこでバイデン政権は大企業への課税強化を打ち出しました。
巨大企業は少なくとも15%を納めるよう法律を改正したのです。
自社株を買うと税金が・・・
さらにアメリカの株高を演出してきた要因の一つ、自社株買いにもメスが入りました。
2023年から自社株を行うと、その金額の1%が税金として取られることになります。わずか1%とはいえ、これは画期的な出来事といえるのではないでしょうか。
株価への影響は今のところ不透明ですが、株主至上主義への反動が始まったといえます。
最後に
もっとも、アメリカでは2022年11月に中間選挙があります。
バイデン政権の一連の動きは格差拡大に嫌気がさしている庶民階級のガス抜きである可能性も十二分にあります。
低支持率に危惧を抱いて、弱者の味方になったふりをしているということです。
どちらが本当の姿かを見極めるためにも今後の動向を注視していく必要がありそうです。
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