優れた景気の自動安定化装置。しかし、その機能は弱体化された

てんびん

日本はバブル崩壊後、直接税の税率を下げ、間接税の税率を上げてきました。

しかし、これは正しい政策だったのか。

所得税や法人税といった直接税には、インフレやデフレの振り子を戻す機能があります。その機能を弱めればデフレから脱却しにくくなるのは当たり前です。

どうやら誤った政策を続けてきたようなのです。






所得税、法人税の負担は減少


以下は昭和61年(1985年)以降の所得税の税率を図に示したものです。

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(出所:財務省)

平成6年(1994年)、平成18年(2006年)と最高税率が着実に下がっていったことがわかります。その後、少し上がったのは格差是正と税収不足対策という2点が原因でしょう。

また、法人税も同様に税率は繰り返し下げられています。

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(出所:財務省)

消費税は着実に増加


その一方で、着実に税率が上がっていったのは消費税率です。

バブルの頂点である1989年に導入され(3%)、その後1997年に5%へ、2014年に8%へ、2019年に10%へと上がっていきました。

直接税の税率ダウンの人質に消費税が利用されたのは間違いないと見ます。

法人税、所得税の税収が減少する中で消費税収は安定的に増加していることが以下のグラフからもわかります。

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(出所:財務省)

アベノミクス以降、直接税の税収もアップしました。しかし、考えてみるに実質賃金が増えない中で税収だけが増えるというのは庶民からすれば許しがたい。

だからこそ今だデフレから脱却できない、この原因は税金であることは火を見るよりも明らかです。

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(出所:新世紀のビッグブラザーへ(三橋貴明氏ブログ))

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景気の自動安定化装置


ところで、累進型の所得税には高額所得者の所得が低所得者へ移転されるという所得の再分配効果があります。

それとともに、累進所得税には景気を安定化させる機能があります。景気が過熱して高所得の人が増えれば、所得税の負担が増えて可処分所得が減少し、需要を減退させます。

景気を冷まして、インフレ抑制方向に働くわけです。

逆に、景気が冷え込んで低所得者が増えれば所得税の負担が減って、可処分所得の減少は抑えられて需要を保つことができます。

これにより景気後退を避けてデフレ圧力を少なくすることができます。

いわば「やじろべえ」のようなものであり、これは「ビルトイン・スタビライザー(自動安定化装置)」と呼ばれます。

平成の政策の誤り


景気の良いときにはたくさん税金を払ってもらい、景気が悪いときには税負担を少なくする。これが累進型の税のメリットです。

これに対し、消費税は残酷極まりない。景気が良かろうが悪かろうが容赦なく庶民をむさぼりつくす。いわば賭博の胴元のような税金です。

バブル崩壊後にビルトイン・スタビライザーの機能を弱め、消費税率をアップし続けたことは明らかに誤った政策でした。

岸田政権はこの誤りを正すどころか、加速させそうな気配であり、注視が必要です。

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