オフィス系Jリート、年初来高値水準へ。オフィス需要は復活したのか?

2022年8月末、オフィス系Jリートの価格が年初来高値水準にまで戻してきました。
新型コロナ騒動は今だ続いている中、なぜオフィス系Jリートの価格が上昇しているのでしょうか。その原動力はいったい何なのか、気になるところです。
オフィス系Jリートの反発
コロナ騒動勃発以降、テレワークの浸透でオフィス需要は減退して空室率が上昇しており、賃料が下落し続けていることを多くの人は知っているでしょう。
会社によって考え方は違いますが、アフターコロナにおいてもテレワークを続けるという会社も多く、ウイルスが働き方を大きく変えたといえます。
当然、オフィス需要は低空飛行とならざるを得ません。しかしながら、ここに来てオフィス系Jリートの価格が上昇しています。
この動きはアフターコロナを先どった構造的なものなのか、単なる金融市場の需給要因なのか、Jリート投資家としては気になるところなのです。
東証リート指数との比較
以下はここ1年の東証リート指数の値動きです。

概ね横ばいのボックス相場と考えてよさそうです。一方、以下はオフィス系Jリートの中で最も時価総額が大きい日本ビルファンド投資法人の1年間の値動きです。
●日本ビルファンド投資法人(8951)

東証リート指数と似たような動き(オフィス系が最も比率が高いから当たり前っていえば当たり前だが)ですが、今年(2022年)に入ってからのリバウンドが大きいようです。
経営者も人の子
ところで肝心の値上がり要因、これを調べてみるといささか希望を失うのです。
なにしろ、投資口価格の上昇要因は空室率の改善や賃料の反転といったファンダメンタル的要因ではなく、テクニカルな要因が主であるからです。
株価同様、Jリートの経営者も投資口価格の動向には注意を払っています。
中でも気になるのがNAV倍率(※)。
これが1倍を割っていると極端な話、投資法人を解体清算し、投資家にお金を返した方がよいのではないかという考え方が成り立ちます。
そのため、Jリートの経営者も投資口価格の下落は避けたいところ。自らの評価にも直結することだからです。誰しも無能な経営者だと思われたくはないはず・・・。
※NAV倍率
不動産の時価に基づく不動産投資法人の純資産価格をNAV(Net Asset Value)という。さらに、投資口価格を、投資口数1口あたりのNAVで割ったものをNAV倍率という。株式投資におけるPBRの概念に近い。NAV倍率が1倍を超えると不動産投信の実際の価値よりも市場での価格が高いと考えることができる。
不動産の時価に基づく不動産投資法人の純資産価格をNAV(Net Asset Value)という。さらに、投資口価格を、投資口数1口あたりのNAVで割ったものをNAV倍率という。株式投資におけるPBRの概念に近い。NAV倍率が1倍を超えると不動産投信の実際の価値よりも市場での価格が高いと考えることができる。
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テクニカルな投資口価格上昇戦術
ではいったい何をしたのか。
取られた施策は高い分配金の維持と自己投資口買いです。
具体的には、1つめが評価益が出ている物件を売却して高い分配金を吐き出すという手法です。
そして、2つめは自社株買い同様、自己投資口買いにより流通する投資口数を減少させて、1口あたりの価値を高めようということです。
確かにこれらの対策で投資口価格は上昇しました。しかし、これは長期にわたる安定した成長を目指すものではありません。
一過性の麻薬のようなものであり、下手をすれば縮小均衡路線に走ることになります。
最後に
2023年は東京都心でオフィスの大量供給が予定されています。2022年の約4倍にもなり、2023年問題などと呼ばれています。
オフィスを取り巻く環境は依然として不透明で厳しいといわざるを得ず、短期的な投資口価格の戻りで喜んではいられない。
長期的な視野に立てば慎重姿勢を崩すことはできないというのが個人的見解です。
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