DCが伸びたから投資信託が伸びたのではない。話はその逆であった

アメリカで投資信託の残高が増えたのは401Kと呼ばれる確定拠出年金の残高が増えたからだという見方があります。
これは一見正しいように思えます。401Kが増えればそれに比例して投資信託の残高が増えていく。そして残高が増えるがゆえに株式市場が上昇する。
この好循環がうまく回ったと考えるのはごくごく自然だと思われます。
しかしその見方はどうやら正しくないようです。
卵が先か鶏が先かということになるのですが、どうやら話は逆のようなのです。
アメリカもかつては・・・
いくら401Kが普及しても、投資信託の運用パフォーマンスが悪ければ資金は投資信託には向かわない。
さまざまな運用ができるのにあえて低パフォーマンスの投資信託を選ぼうなどという奇特な人はいません。
今となっては信じがたいことですが、あのアメリカでも1990年代初頭には企業型確定拠出年金の資産のうち、投資信託で運用される資産はわずか10%台にとどまっていました。
アメリカ株、1990年代に覚醒す
これはアメリカ株の推移と密接な関係にあるだろうことは容易に推測できます。
以下は1972年から2022年までのNYダウの動きです。

1990年代半ばまではアメリカ株の上昇は微々たるものであることがわかります。
しかし、1990年代半ば以降、株価は加速的に上昇していきました。
大まかにいって、この30年間でアメリカ株は約10倍に値上がりしていると考えればよいでしょう。
突出する米企業のROE
1990年代半ばからの株価の上昇に自信を深めた401Kの契約者が積極的に投資信託への投資を増やしていったことは想像に難くありません。
投資が増えれば株価が上がり、株価が上がれば投資が増えるという好循環の連鎖が30年にわたって続いているといえます。
株価の上昇を支えてきたのは株主重視の経営に拍車がかかったからにほかなりません。
従業員の給与は抑えて費用を抑えるとともに、自社株買いや配当性向のアップによる自己資本の圧縮により自己資本利益率(ROE)を確実に上昇させてきたのがアメリカ企業の姿だといえるでしょう。
給与を抑えられた従業員が資産を増やすには株式や投資信託に投資するほかありません。でなければ搾取されるだけに終わってしまいます。
以下は2019年の日米欧のROEの分布です。

(出所:経済産業省)
アメリカ企業のROEが突出して高いことがわかります。
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資産所得の伸びに大きな差
投資信託ひいては株価の変動が資産所得に与えている影響がいかに大きいか、最近20数年来の日米英の金融資産の増加率を見ると驚かされます。

(出所:金融庁)
そしてまたアメリカの金融資産の規模にもまた驚きを禁じ得ません。
人口比よりも2倍近い金融資産を保有しており、それは1990年代以降に大きく伸びていることがわかります。
最後に
DCが伸びるから投資信託の残高が増えるのではなく、投資信託の運用パフォーマンスが良いから投資信託の残高が増えるという事実を金融関係者は肝に銘じるべきでしょう。
投資信託運用会社、販売会社はひたすら投資家のために運用コストを下げ、パフォーマンスをよくしなければ再びそっぽを向かれると考えられます。
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