自社株買い、やるやる詐欺という裏切り行為で失望売り

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2001年の法律改正(当時は商法、現会社法)により、企業は自社の株式を買うことができるようになりました。

自社株買いは市場に買い手が増えるとともに、流通する株式数も減ります。当然需給関係は良くなり、株価が上昇するというのが一般的な考え方です。

しかし、一部企業は自社株買いをすると発表しておきながら実際には買わない。そして、株主から失望売りが出てくるといった事例もあります。

自社株買いを取り巻く環境についてまとめてみました。






自社株買い、その目的は?


成長できる分野があれば配当や自社株買いで自己資本を減らすよりも、新たな設備投資をし、もっと利益を上げていくのが理想的な姿であることは間違いありません。

よって、自社株買いが増えるということは不健全ではないでしょうか。

以下は日米の自社株買いの金額規模を表しています。左がもちろん日本です。

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(出所:金融庁)

アメリカの自社株買いの規模がいかに大きいかがわかります。アメリカは経済が成長しているのに自社株買いの規模が大きいのはいささか不可解です。

これは株価を上げること自体が経営者の目的となっており、長期的な成長という視点が小さくなっているからであろうと推測します。

市場原理主義の進展


また、配当支払額の推移はもっとわかりやすい。

日本では2000年代初頭から、アメリカはもっと以前から株主への配当を増やし続けています。対GDP比も右肩上がりであり、増えた利益以上に配当が増加していることがわかります。

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(出所:金融庁)

日本では株主資本主義、新自由主義、市場原理主義といったものが2000年代初頭から加速したというわけです。

所得再分配で救われる日本


新自由主義によってもたらされるもの。それは格差です。

市場が全てを解決する、市場は正しいといった市場原理主義によって人間も商品化される。そして、負け組は努力が足りないという一言で片づけられます。

以下は日本のジニ係数の推移です。

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当初所得でのジニ係数は確実に右肩上がりとなっていることがわかります。

日本にとって救いなのは、格差是正のための所得再分配政策がそれなりに機能しており、当初所得ジニ係数からはかなり緩和されている点です。

アメリカや中国などは悪しき不平等としかいいようがない。格差が拡大しすぎて社会が分断しています。

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ROE8%を目指せ!


ところで、2022年に入り、企業は自社株買いを積極的に行っています。

企業が自社株買いを行うのは自社の株価が不当に安いと考えているという側面もあります。これは投資家に対するメッセージにもなります。

そのため、企業が自社株買いの実施を発表すると概ね投資家は好感し、株価は上昇します。

実際のところ、自社株買いを発表した企業の発表日翌日の株価は約65%の割合で上昇しており、上昇率の平均は4%弱となっています。

なにしろ自社株買いを行えば企業の自己資本は減り、少ない資本でより高い利益を上げたということになります。

要するに自己資本利益率(ROE)が上昇するのです。

日本企業は長年、ROEが欧米企業に比べて低いといわれてきました。ROEは8%が合格ラインというのが相場であり、企業経営者はROE8%の達成に向けて自社株買いを行っているという面もあります。

なぜ8%なのか?興味のある方は「ROE」「伊藤レポート」というキーワードを組み合わせて検索をしてみればすぐにわかります。

最後に


しかし、中には自社株買いを発表しながら、実際には買いに入らない企業もあるのが実態です。

自社株買いやるやる詐欺といったところでしょうか。

いつまでも自社株買いをしないと投資家は裏切られた気分になり、失望売りが出てきます。自社株買いを発表したからといって、それを鵜呑みにすると騙されることがあるため注意が必要です。

よくよく過去の実績を検証してみる必要があります。

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