矛盾だらけの通貨ユーロ。歪みを抱えていつまで持ちこたえるのか

ユーロ

円安が続いています。しかし、今の状況は円安というよりもドル高。ドルが世界的に強くなっており、他の通貨は相対的に弱くなっています。

ユーロもまたしかり。

円が売られるのと同様、ユーロもまた売られています。また、ユーロはその生い立ちや性格からして多分に矛盾や歪を孕んだ通貨であり、強国ドイツだけが得をするといった側面があります。

このユーロという通貨。いつまで矛盾を抱えながら走り続けることができるのでしょうか。






ユーロ売られる


足元でユーロが売られています。

●ユーロ/ドル
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ユーロ安の要因は2つあるといえます。

まずはドル金利の高騰でユーロ売り、ドル買いの動きが進んだことです。しかし、ユーロ圏のインフレは日本よりもひどく、金融を引き締めているため円ほどは売られてはいません。

もう一つの理由はウクライナ戦争です。

なにしろ欧州はウクライナのすぐ横に位置し、ロシアとは陸続き。ここに来てウクライナがNATOへへの加盟を希望しており、それを受け入れればロシアとの緊張は一気に高まります。

そんなわけで、地政学的リスクからユーロは売られているといえます。

ユーロ参加国の悲劇


ところで2002年に紙幣やコインとして流通を始めたユーロが20年の歴史を刻みました。

導入各国には経済格差があり、また景気変動もすべての国が同じ動きではない中、同一の通貨を使うというのは多分に矛盾を孕んでおり、歪が生じるのは当たり前です。

自国通貨であれば、景気が悪くなれば金利を下げることもできる。

しかし、19か国が参画しているユーロでは1つの国がわがままをいえません。いくら自国の景気が悪くなっても多くの国の景気が良ければ金利は高く据え置かれます。

要するに金融政策を自国が行う裁量はまったくございません。

国が会社のようなものに


経済政策として自国の裁量でできるのは財政政策ということになります。

しかしながら、財政政策とて無尽蔵に行うことはできません。なにしろ自国には通貨発行権がないのですから。

てなわけで、財政が健全な国とそうでない国とでは同じ通貨の国債でも利回りが異なってきます。日本でいえば社債の利回りが企業の信用度によって異なるのと同じと考えるとわかりやすいでしょう。

そして、企業は円を発行することはできません。よって倒産のリスクがあります。ユーロ参加国も同じ構図です。要するにユーロ参加国はユーロの中の一つの会社のようなものなのです。

実際問題、イタリアもドイツもユーロを使用しているわけですが、国債の利回りは大きく異なります。

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ユーロ安で儲けた国


悪貨は良貨を駆逐するという言葉があるように、経済的に弱い国も抱えるユーロは安くなりがちです。

ユーロが安くなると都合がよい国は輸出競争力のあるドイツです。円安が輸出企業にとって有利に働くように、ユーロ安はドイツにとって都合がよい。

というわけでヨーロッパではドイツの経済力が圧倒的に大きいといえます。

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(出所:世界経済のネタ帳)

最後に


ユーロは誕生してまだ20年あまり。壮大な実験はまだまだ始まったばかりだといえます。

今後数十年後、ユーロが抱える歪はどのように解消されるのか、あるいはユーロは瓦解するのか、その結果は神のみぞ知るなのです。

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