無意識インサイダー取引に気をつけよ。取引推奨行為の規制

耳

コンプライアンスなどという言葉が流行り出したのは2000年頃。それから20年の歳月が経過しました。

それでいて企業や個人の倫理感は向上したのか。実に怪しいところです。

株式取引という観点から見ればインサイダー取引が法令違反の典型事例といえるでしょう。そしてなんと昨今、インサイダー取引が増加しているというのです。

まったくもってコンプライアンスの言葉倒れ・・・。言ってることとやってることがまるで違い、コンプライアンスという言葉が上滑りしています。

これでは証券市場の信頼は揺らぐばかりだといえます。






インサイダー取引一向に減らず


以下はインサイダー取引にかかる課徴金(※)納付命令の勧告件数の推移です。

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(出所:金融庁)

年によってばらつきがあるとはいえ、とても減少傾向にあるとは思えません。

そして2022年に入り、インサイダー取引で摘発される事例が増えているというのです。いったいどんな背景があるのでしょうか。

(※)課徴金
証券市場の公正性・透明性を確保し、投資家の信頼が得られる市場を確立することを目的とし、証券市場への信頼を害する違法行為などに対して、行政として適切な対応を行う観点から、規制の実効性確保のため行政上の措置として違反者に対して金銭的負担を課す制度。


課徴金そして刑事罰


インサイダー取引に関する課徴金納付命令までの手続は、具体的には以下のようになっています。

1.証券取引等監視委員会が調査を行い、課徴金の対象となる法令違反行為があると認める場合には、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し勧告を行う。

2.これを受け、金融庁長官は審判手続開始決定を行い、審判官が審判手続を経たうえで課徴金納付命令決定案を作成し、金融庁長官に提出する。

3.金融庁長官は、決定案に基づき、課徴金納付命令の決定を行う。

なお、インサイダー取引は刑事罰も用意されており、悪質なインサイダー取引の場合は刑事告発されることもあります。

その刑罰は重く、最悪5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。

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取引推奨という罪


インサイダー取引については多くの社会人が知っていることでしょう。

しかし、気を付けなければならないのが、2014年4月から導入された取引推奨行為の規制です。

インサイダー情報を知っている者がその内容を知らせることなく、知人や友人、親戚などに株の取引だけを勧める行為が規制の対象となりました。

思い出されるのは、ドン・キホーテ元社長が取引推奨行為で逮捕された事件です。

上場企業の社長としてはあまりに稚拙であり、知らなかったでは済まされない。知らないこと自体がすでに罪だといえるでしょう。

その詳細は以下の関連記事をご覧ください。

(関連記事)ドン・キホーテ前社長逮捕。東京地検特捜部の尾を踏んだか
       PPIH(旧ドンキHD)前社長に不正疑惑。最大の焦点は・・・

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モラルハザードは消えず


最近の事例で驚かされたのは銀行員によるインサイダー取引です。

この銀行員は職務上、りそなホールディングスによる関西みらいFGのTOBを知ったといいます。親族に利益を得させる目的で取引を推奨したうえに、自らも取引をしていたというのですからびっくりです。

もはやコンプライアンスやモラルのかけらもない。

取引推奨行為は上場企業に勤める全社員に、その罪を犯すリスクがあるといえます。気を付けましょう。

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