昨日の友は今日の敵。ファンドラップ市場に運用会社が直接参入

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手数料稼ぎに利用されてきた金融機関による投資信託の回転売買は金融当局から厳しい視線が投げかけられ、金融機関はビジネスモデルの再構築に励んできたのはご存じのとおりです。

その主役ともいうべき商品がファンドラップと呼ばれるものです。

投資家は金融機関と投資一任契約を交わし、運用を任された金融機関が顧客のニーズに沿って複数の投資信託に投資していくものです。

相場環境が変化すれば銘柄を入れ替えたり、資産配分を変えたりします。

このファンドラップ市場に新たな刺客が登場しました。まさに昨日の友は今日の敵なのです。






ファンドラップの存在感高まる


ファンドラップを提供しているのは主に証券会社です。

以下は銀行、証券会社が取り扱う一時払い保険・投資信託・ファンドラップ・債券の販売額と残高の推移です。

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(出所:金融庁)

ファンドラップは銀行に比べて、証券会社の比率が高いことがわかります。

ファンドラップ、そのビジネスモデル


ファンドラップでの運用残高は2022年6月末で約13兆円となっており、まだまだ緒についたばかりですが、それでも5年間で2倍に増えています。

その中でも野村証券と大和証券が突出しており、2社だけで6兆円と約半分を占めています。

今までのビジネスモデルは、証券会社がファンドラップのサービスを提供し、投資信託の運用会社はファンドラップ向けの投資信託を提供するという形で役割分担がされてきました。

ファンドラップは顧客一人ひとりと投資一任契約を締結しなければならず、また各人ごとに運用報告書を作成しなければなりません。

人手が少ない投資信託の運用会社ではそんな手間暇はかけられないため、商品提供にとどまっていたというのが実態です。

新たなる参入者


ところが技術の進歩が従来のビジネスモデルにブレークスルーをもたらしています。

一部の投資信託運用会社は外部のフィンテック企業と提携し、自らファンドラップのサービスを提供し始めました。

証券会社に投資信託を供給するのもいいが、自分たちでやればもっといいということです。

そこには投資信託運用会社が置かれている苦境という要因も隠されています。

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運用会社がファンドラップに乗り出す理由


どんな要因なのか。

昨今の投資家はコストに厳しく、信託報酬は右肩下がりです。

同じ投資信託でもパッシブ運用の投資信託に人気が集まっており、より高い信託報酬をふんだくれるアクティブ型の投資信託は人気がなくなりつつあります。

いわゆるテーマ型の投資信託などです。

パッシブ運用は単にベンチマークと同じように動くよう銘柄を組み入れるだけであり、信託報酬は低く、運用会社にとってはうまみが少ない商品といえます。(逆にいえば投資家にとってはうまみがある。)

そこで目を付けたのがファンドラップというわけ。

ファンドラップであれば残高に対し、年間1%~2%くらいの安定収益が確保できる。

安定収益を求める金融機関にとっては魅力ある金融商品なのです。

最後に


フィンテックと呼ばれる新技術は新たなビジネスチャンスを生み出します。

そしてそれは、従来のビジネスモデルや業界の秩序を破壊する力を持っています。金融機関にとっては脅威にもなるし、チャンスにもなりうる。

金融業界は今まさにその知恵が試されているといえそうです。

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