自社株買いの減少が株価上昇圧力を弱めるという構図

2022年後半から世界的に自社株買いが急激に減少しています。
1990年代後半以降、アメリカ株が上昇し続けた原動力の一つは自社株買いです。その自社株買いが急減しているのですから株価の上昇にブレーキがかかると考えるのが普通でしょう。
企業が自社株買いを控えている原因はいったい何なのでしょうか。
自社株買い、悲喜こもごも
アメリカ企業が自社株買いを急速に増やしたのは、2000年くらいからでしょうか。
その時期と、株価の上昇は見事にリンクしているのです。

(出所:世界経済のネタ帳)
企業は株主資本主義に走り、ROEを上昇させるため、自己資本を少なくするよう自社株買いに走りました。
また配当も増やし、会社が利益を上げても儲かるのは株主と経営者だけで、従業員は蚊帳の外となってしまいました。
この状況は今もなお続いていると考えられます。
急減した自社株買い。その原因は・・・
とはいうものの、自社株買いについてはここ最近、大きく状況が変わっています。
2022年後半から世界的に自社株買いが急減し、12月には前年同月比で8割減にまで減少しました。
この減少の原因は2つです。
1つめは金利の上昇です。アメリカ企業は借金をしてまで自社株買いをする企業も珍しくありません。
(関連記事)借金までして配当、自社株買い。そして債務超過とは・・・
しかし、金利が急上昇したため、金利負担を増やしてまで自社株買いをしようという企業は少なくなったということです。
経営者の迷いと不安
2つめの理由は企業業績の悪化懸念です。インフレによる金融引締めは景気に冷や水を浴びせます。
今秋あたりから本格的な景気後退に陥るとの見方もあり、企業経営者も先行きに不安を持ち始めています。景気が悪化すれば当然株価も下がるでしょうから。
自社株買いは株価が割安なときに行ったほうが効果的だし、投資家には自社の株価が割安であるというメッセージを与えることもできます。
しかし、現状の株価が割安だという自信が持てないために自社株買いに慎重となったと考えられます。
自社株買い悪玉論
さらにアメリカでは富裕層と貧困層の格差が拡大し、不満が高まっていることから、富める者をさらに金持ちにする自社株買いに罰金ともいえる課税がなされることが決まりました。
具体的には自社株買いの金額に、1%の税金がかかるというのです。
1%がどの程度の影響を与えるのかは定かではありません。しかし、自社株買いに対して批判的な姿勢が示されたことは間違いありません。
今後、自社株買いをバンバン行って株価を上げるという手法はとりにくくなっています。
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周回遅れであることの優位性
一方、日本はどうなのでしょうか。
日本は欧米の後を周回遅れで追いかけるのが得意技です。アメリカで自社株買いに批判的な見方が出ており、また自社株買いの金額も急激に減少している一方で、日本の自社株買いを順調に増えています。
日本は相対的に金利上昇が緩やかという面もあるでしょう。しかし、それだけではないと思うのです。単に周回遅れで動いているだけなので、日本では自社株買いは今後さらに増えると推測します。
そう考えれば、日本株はアメリカ株よりも有望だという見方もできます。
さらに2024年からは新NISAで投資が活発になると予想されます。2023年は厳しい年になりそうですが、楽観的に見れば、絶好の仕込み場となるような気がしてならないのであります。
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