ポンジ・スキームを連想させる毎月分配型投資信託

コイン

(最近再び毎月分配型の投資信託が売れ始めたということで、多少なりとも警鐘を鳴らしておきたく、過去記事をまとめました。)

ポンジ・スキームという言葉をご存じでしょうか。古典的な詐欺手法ですが、陳腐化することなく今なお存続する典型的な詐欺の手法です。

投資詐欺のほとんどがこのスキームを活用しています。手を変え品を変えて・・・。






ポンジ・スキームとは


ポンジといってもスポンジのように吸い取るからポンジではありません。

チャールズ・ポンジという詐欺師の名前に由来します。投資詐欺のほとんどがこのポンジ・スキームによって行われています。

投資をして運用し利益を還元するなどと言って出資を募り、実際には資金運用などまともに行わず、出資金の多くは詐欺師の懐へ入り闇に消えていきます。

しかし、毎月多くの配当を支払うことでいかにもうまく投資をしているかのように偽装するのです。

怪しげな投資案件が今も


いかにもポンジ・スキームっぽい投資案件がネットなどでも見当たりますが、実際に被害者が出ないと警察も動けないのでしょう。

なにしろ証拠をつかむのが難しい。真っ当な投資のように見せかけているから怪しいと思ってもなかなか手が出せないのが実態のようです。

ポンジ・スキームはいかにも信用できる案件かのように偽装するために以下のような工作がなされることが多いようです。

・有名人を広告塔として利用し、信用させる(私も儲かってます的な)
・洗練されたWEBサイトや広告などで安心させる
・当初はきちんと配当を出し信用させる(もっともタコ足配当・・・)
・利益を得たと思っている人のクチコミを活用する(勘違いなのだが)
・詐欺と断定されないよう、もっともらしいスキームを提示する

権威付けがあればあるほど人を信用させることができ、集まるお金も巨額になります。

夜にこそこそと動き回る泥棒はすぐに怪しまれ捕まりますが、昼間に堂々とスーツを着ている泥棒は怪しまれないのでなかなか捕まらないといったところです。

白昼堂々、玄関から堂々と忍び込む盗人のようなものなのです。

アメリカでの巨額詐欺事件


アメリカではかつてとんでもない金額(650億ドル≒7兆円)の被害を出した投資詐欺が起こっています。

なんと被害者には、映画監督のスティーブン・スピルバーグ、映画俳優のケヴィン・ベーコンなども名前も連なります。

騙されるはずです。詐欺の犯人はNASDAQ市場の創業メンバーであり、後にNASDAQの会長も務めたというのですから。(バーナード・マドフという人)

なんと25年にもわたって騙し続けたというのですから驚きです。

計算例(その1)


ここでちょっと簡単な例を考えてみましょう。

毎月1人、1,000万円の出資者を集めたとします。そして、毎月50万円配当をしながら、詐欺野郎が100万円をくすねて懐へ入れてしまい、あとは何もしないというスキームです。

出資者は年間で600万円の配当をもらえ年利60%!!

毎月毎月、新たな出資者が現れればこれだけの配当を払い、毎月100万円かすめ取っても約3年間はごまかし続けることができる計算です。

20200602pon1.jpg

計算例(その2)


5人の出資者しか集まらなかった場合はどうでしょうか。

20200602pon2.jpg

それでも15か月は持ちこたえました。出資者の出資金は総額5,000万円。そのうち1,500万円は闇に消え、配当の3,250万円はもらったお金をただ返しただけです。(出資者は配当と思い込んでいる。)

最後に破綻したときにはもちろん元本はゼロになっています。

計算例(その3)


では、5人の出資者を集めたが、半年後に3人が解約した場合はどうでしょう。解約した人にはきちんと1,000万円の元本を返すという前提です。

20200602pon3.jpg

わずか8か月で破綻してしまいました。

計算例からわかること


上記の例からわかることは2つです。

・出資者を集め続けることが、詐欺スキームをなるべく生き延びさせることになり、かすめ取る金額を多くできる
・なるべく解約させないことが大事(元本部分は返さない)。解約させないことで生き延びられる期間が長くなる

超低金利が続く中でお金を増やしたい小金持ちのお年寄りなどはあっさりと騙されてしまうかもしれません。

また、意外なことに世間知らずの若者も簡単に騙されるようです。

高い分配金が勘違いを引き起こす


ポンジ・スキームの肝は収益などないのに配当をすることで、出資者に儲かっていると勘違いさせることです。

この点、毎月分配型投資信託も投資した債券やリートなどから得られた配当や売却益以上の分配金を出すケースが多かったことから、多くの投資家は投資信託の運用は順調であると勘違いをしました。

そしてどんどんと投資資金を増やしていったのです。その実、投資したお金が自分のところにそのまま還流しているだけなのにです。

運用環境の悪化と延命策


金利がどんどんと低下していき、分配金を出すべきではないにもかかわらず、運用会社はファンドの命を長らえるために、ポンジ・スキーム同様の延命策を取ります。

それは以下の2つの作戦に集約されるでしょう。

1.無理な分配でも出し続けることで、新たな投資資金を呼び込み、ファンドを延命させる
2.なるべく高い分配を続け、投資家に解約しようという動機を与えない

これらの作戦を実行することで、超低金利からの金利上昇を待つという戦略であったろうと思います。

しかし、思うに任せず金利は世界的に低空飛行を続け、ついに高い分配金を払い続ける余力は無くなりました。

投資信託の分配可能額は変更すべき


もちろん、毎月分配型の投資信託は各種の法令に基づいて募集された合法的な仕組みです。しかし合法的とはいえ、そのやり口はポンジ・スキームを熟知していたと思わざるを得ません。

多くの投資家は半ば騙されたようなものです。

投資信託の分配可能額は法改正により縛るべきものと考えます。

具体的には、分配可能額は当期に得られた配当金と売却益の金額内に収めるべきだと思います。

もちろん、分配せずに内部留保していた積立金からは分配してもいいでしょう。過去に分配しても大丈夫だった資金を貯めていただけなのですから。

感想


それにしても合法的な投資スキームである投資信託にもポンジ・スキームを連想させる分配が可能であることに驚きを禁じえません。

この点で、トータル・リターンという概念を取り入れた金融当局の考え方は正しいものでした。

しかし、なお根本的な解決には至らないのであります。

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