次期日銀総裁、植田和男氏とはどんな人物なのか。過去の言論から探る

過去10年間、コロナ禍以外の財政拡大もせず、消費増税を2回もしたのにもかかわらず、日本経済が奈落の底に落ちずに踏みとどまったのは日銀の異次元金融緩和によるものだと確信しています。
その日銀を10年にわたり率いてきたのが、黒田氏というわけですが、今春任期満了となり、次期日銀総裁が誰になるのかが金融市場における一大注目ポイントとなっていました。
最近の相場の膠着は日銀人事を見極めたい、そんな思惑によるものだと推測するのです。
そして、次期日銀総裁となるであろう人物が報道されました。いったいどんな人物なのでしょうか。どんな金融政策が今後とられるのかを予想すべく、過去の言論などを調べてみたいと思った次第なのです。
その経歴は?
まずは経歴から。
まあ、日銀総裁となればエリート中のエリートですので、当たり前のように東京大学卒。過去5代の日銀総裁を調べてみると速水総裁だけが東大ではありませんでした(現一橋大)。
そして、異色なのは理学部卒業ということ。その後、経済学部も卒業していますので、文武両道ならぬ、文理両道ということです。
また、財務省出身でも日銀出身でもないことも異色です。
一貫して教職にありながら、政府や日銀、民間企業の要職を兼務するといった経歴の持ち主です。
その意味において、過去のしがらみに囚われにくいというメリットがあると思われます。
デフレ突入期の日銀審議委員として
植田氏の経歴で興味深いのは、1998年から7年にわたり、日銀の審議委員を務めたことです。
この間、植田氏はたびたび、金融政策決定会合での議論に、一石を投じたといいます。
例えば、多くの金融機関が経営破綻した後の2000年8月、ゼロ金利解除が議論になった金融政策決定会合で、反対票を投じました。これはデフレへ戻ってしまうことへの懸念であったことは明らかです。
この時期は日本が本格的デフレに突入した時期と重なるわけですが、それに少々の抵抗をしたという意味において、今後の金融政策が現状と大幅に変わる可能性は低いと思われます。
当時の心境について植田氏は「物価上昇率はまだマイナス。リスクをとる必要はないと考えました」と述べています。
1,2%のデフレは許容範囲!?
一方で気になる点もあります。
植田氏は2005年に『ゼロ金利との闘い 日銀の金融政策を総括する』という本を出しています。その中では以下のような論が展開されています。
資源配分への悪影響、中央銀行の財務状態をへの配慮等を無視してよければ、デフレの克服はたやすい。財を大量に購入して廃棄するということを続ければ、デフレは止まる。中央銀行が政府の代わりに公共投資を大量に実施しても同じである。あるいは大量に株式を購入し、株主としてその企業に設備投資を命じることも考えられる。なぜこうした政策を実施しないかといえば、1、2%のデフレのコストは、自動車やパソコンを大量購入して廃棄するコストに比べれば小さいと考えられるからである。大恐慌時のような10%を超えるデフレのときには、こうした政策も検討対象になろうし、現実に実施されもした。ただし実施主体は中央銀行ではなく、政府であった。国民に大きな負担が発生するかもしれないような政策は、投票によって選ばれている政治家が決めるものと考えるべきだろう。
1、2%のデフレのコストはたいしたことはないというわけです。
しかし、現実はどうでしょうか。
1990年代半ばから日本経済は本格的なデフレに陥りました。2010年代初頭まで物価が連続的に下落し続けていることがわかります。

(出所:世界経済のネタ帳)
その間、日本はどんなコストを支払うことになったのか?自殺者と失業者の増加です。

(出所:ニッポンの数字)
恐ろしいまでに物価の下落と自殺者の増加に相関があることがわかります。このコストが小さいとはとてもいえないのではないでしょうか。
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最近の言動から
発行から15年以上の歳月が経っていますので、考えは変わっている可能性もあります。最近の言動はどうでしょうか。
2022年7月に新聞に寄稿した記事では、「金利引き上げを急ぐことは、経済やインフレ率にマイナスの影響を及ぼし、中長期的に十分な幅の金利引き上げを実現するという目標の実現を阻害する」と述べています。
短期的には金融緩和は仕方がないが、長期的には金融は引き締めたほうがよいとも取れます。
若干心配になってきました。
最後に
今後の日銀の金融政策は、黒田日銀に比べると日本経済にとってマイナスとなる可能性が高いと見ます。
皆がどう思うか。それは2月13日(月)の株式市場が示してくれるでしょう。私めの見方が間違っていることを願うばかりです。
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高橋洋一氏が植田次期日銀総裁について述べています。高橋氏の指摘はなかなか厳しい。
危険な香りが漂ってきました。
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