パートタイム労働者が多いと経済成長するのか、しないのか?

オランダ

日本における女性のパートタイム労働者は35%と比較的高くなっています。

しかし、非自発的なパートタイム労働者はその中の17%にすぎず、多くの人は自ら望んでパートタイマーとして働いています。

これに比べて、例えばフランスでは女性のパートタイム労働者は22%と日本に比べて少ないですが、非自発的パートタイム労働者の比率は36%にも及びます。

フルタイムで働きたいのに仕事がないという人が多いということです。今回は女性のパートタイム労働と経済成長について考えてみたいと思います。






日本はパートタイム天国!?


以下は世界主要国のパートタイム労働者の比率の推移です。

男性は右肩上がり傾向、女性は国によってバラバラといった感じです。

20230314part.jpg
(出所:社会実情データ図録)

日本女性のパートタイム比率は世界的に見ても高いほうだといえます。

しかし、自ら望んでパートタイム労働をしている人が多いのですから、恵まれているといえるのではないでしょうか。

単なる打算によるパートタイムという選択


それにしてもなぜ日本では多くの女性がパートタイム労働を望むのか?という疑問が湧いてきます。

これには税制と年金の制度設計によるところが大きいと考えられています。

よく言われるのが130万円の壁、そして150万円の壁です。

130万円の壁とは、年収130万円を超えると健康保険料と年金保険料を負担しなければならなくなるため、その手前で抑えておこうという壁です。

150万円の壁とは、配偶者の年収が150万円を超えると配偶者特別控除が減額されてしまうため、150万円の手前で留めておこうという壁です。

その他にも多くの企業が配偶者手当を出す基準を103万円に設定していることから、それ以内に抑えようとする103万円の壁というものもあります。

異色なオランダの姿


ところで、上のグラフを見て、オランダのパートタイム比率が高いことに驚いた人が多いのではないでしょうか。

ダントツのトップとなっています。

オランダはパートタイム労働しかないので可哀そうだと思った人もいるかもしれません。

オランダ女性のパートタイム比率は75%にもなります。しかし、その中で非自発的パートタイム労働者の比率はわずか4%にすぎません。

男性ですら、19%と突出していますが、非自発的パートは6%にすぎません。ほとんどの人は自ら望んでパートタイム労働者となっているのです。いったいどうしてなのでしょうか。

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オランダ病からの脱出


オランダは日本と似て、国土が狭く、食料自給率も低い。資源に恵まれない中、石油ショックで「オランダ病」とも呼ばれる深刻な不況に陥りました。

その後、オランダは労使協調型の雇用体系への変革が図られ、パートタイム労働者とフルタイム労働者の待遇は同等になりました。

オランダの人々は労働時間の選択の自由が与えられ、それぞれのライフステージに応じて働き方を柔軟に変えているわけです。

オランダと日本


さて、パートタイム労働者が多ければ経済は停滞するのでしょうか。

オランダで労使の協調による「ワッセナー合意」がされた1982年からの1人あたり名目GDPの推移を日本と比較してみました。

20230314oranda.png
(出所:世界経済のネタ帳)

2000年代初頭、日本はあっさりと抜かれ、その差はさらに広がっています。

ところで、働き方改革で日本は変われるのでしょうか。私にはとてもそうは思えません。日本が停滞している理由はほかにあるからです。

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