ペトロダラー体制、終わりの始まり。アメリカが見捨てたか、凋落か

サウジアラビアが中国が主導する政治・経済・安保同盟である上海協力機構(SCO)に参加するといいます。
サウジアラビアといえば中東の親米国家として知られてきたわけですが、最近アメリカとの関係がぎくしゃくしており、中国と急接近しています。
これは日本にとっても大変憂慮すべき事態です。いったい何が起きているのでしょうか。
日本、サウジアラビア頼り
2023年2月の原油輸入動向を見ると、日本は中東からの輸入に98%依存しています。そして、その中でも一番はサウジアラビア。
日本は原油輸入の4割近くをサウジアラビアに依存しているのです。
そのサウジアラビアが西側諸国から少しずつ距離を置き、中国へ接近している。これを憂慮しない日本人はいないでしょう。(いれば相当おめでたい人です)
持ちつ持たれつのペトロダラー体制
元来、サウジアラビアはアメリカと蜜月関係にありました。
アメリカは石油を必要としており、サウジアラビアは危険な地域の中で安全を求めていました。
そこで生まれたのが「ペトロダラー体制」。
これは、1974年にアメリカとサウジアラビア王家が交わした密約で、石油決済を米ドルのみとしてくれれば、アメリカはサウジアラビア王家の安全を保障するという内容です。
サウジアラビアは獲得したドルで米国債を購入し、アメリカはサウジアラビアに武器を供与する。
まさに持ちつ持たれつの関係だったといえます。
ペトロダラー体制への挑戦状
ところが、爆発的な経済成長を遂げた中国は、このペトロダラー体制へ公然と挑戦してきました。
2022年12月、習近平はサウジアラビアを訪れ、石油の人民元決済を打診したのです。
今のところ、実現はしていませんが、今後実現の可能性は十分にあるといえます。上海協力機構(SCO)への参加表明はその一歩だといえるのではないでしょうか。
サウジ、中国への接近の理由
さてなぜサウジアラビアは中国に急接近したのだろうか?
理由は2つ考えられます。
1つはアメリカの石油生産が技術革新で大きく伸びたことです。

(出所:グローバルノート)
今やアメリカは世界一の石油生産国であり、サウジアラビアの存在価値は小さくなりました。ドル決済の維持だけが目的となり、石油の獲得には興味がなくなったといえるでしょう。
そうなればサウジアラビア王家の安全保障についても、重要性は低くなるのは当たり前。サウジアラビアとしては裏切られた思いがあるのではないでしょうか。
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アメリカ、一極主義の終わり
もう1つはアメリカの相対的な弱体化です。
中国が目まぐるしい成長を遂げたため、世界の警察だったアメリカの立場は落ちぶれつつあります。
以下は1980年からのアメリカと中国の名目GDPの推移です。

(出所:世界経済のネタ帳)
ここ20年で中国が一気にアメリカに迫ってきたことがわかります。
そして、物価水準を考慮した実質的な豊かさを占める購買力平価GDPでは既に中国はアメリカを追い越しています。

(出所:世界経済のネタ帳)
経済力は軍事力に直結します。サウジアラビアにとって、アメリカは頼りない存在になりつつあります。
そのため、用心棒をアメリカから中国に乗り換えようとしているというわけです。
日本の切り札はこれしかない
サウジアラビアが親中国家になったら、中国の圧力により日本への石油輸出をやめるかもしれない。その分は中国が買うということになれば、サウジアラビアにとって損はない。
そうなれば、日本は石油の4割を他の国から調達しなければなりません。これは容易なことではないでしょう。
エネルギー安全保障の観点からいって、原発の本格的再稼働は避けられないとみます。
そして、将来的には合成燃料の実用化を急がなければならない。合成燃料が実用化されれば、日本は石油依存から脱却できます。
合成燃料は日本の切り札になりうる可能性に満ちています。
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