理解不能の新NISA成長枠で投資できる投資信託。当初の理念はどこに消えた?

仏

仏作って魂入れず、ならぬ制度作って魂入れずと思えるようなことが新NISA制度で起きています。

もともとNISAは中長期的な資産形成に資するという目的のために導入された制度のはず。

だからこそ、新NISAにおいては、成長投資枠で投資できる投資信託についても一定の基準を作ったのだと理解しています。

ところがどっこい、そんな理念をくつがえすような投資信託が新NISAの成長投資枠で投資可能となるというのですから、いったい当局、あるいは業界はいったい何を考えているのか?と疑念を持たざるを得ません。






新NISAにそぐわない商品


2023年7月10日、投資信託協会は新NISAの成長投資枠で投資できる投資信託の第二弾を発表しました。

その数およそ300本で、第一弾と合わせると約1300本の投資信託が選ばれたことになります。

投資信託にはさまざまな種類があり、中には短期的な利益を追い求めるものや、ひたすら分配金を目当てにするような商品もあり、玉石混交となっています。

新NISA(成長投資枠)においては以下のような投資信託は対象商品から除外されることとされました。

・デリバティブ取引を使った投資信託

・毎月分配型の投資信託

デリバティブ取引を使った投資信託は高レバレッジを謳い文句にしている商品が多い。そして、その商品特性から、長期的に保有するほど不利な形で原資産の値動きとはかけ離れていきます。

また、毎月分配型の投資信託は、タコ足配当をしている銘柄が多く、詐欺のスキームであるポンジスキームと似たり寄ったりといえなくもありません。

(関連記事)ポンジ・スキームを連想させる毎月分配型投資信託

理念を捻じ曲げた脱法的行為


ところで、第二弾として選ばれた投資信託の中に、隔月分配型の投資信託があると聞いて驚きました。

確かに毎月分配ではないとはいえ、制度の目的からすれば的外れな投資信託であることは明らかです。

ちなみに選ばれた投資信託は「楽天・インカム戦略ポートフォリオ」なる投資信託であり、「奇数月決算型」と「偶数月決算型」があります。

両ファンド買えば、毎月分配を受けられることになり、いわば脱法的な取扱に見えます。

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非課税メリット半減、信託報酬も高い


このファンド、米国株式、米国債券などに分散投資し、インカム収益の確保と投資信託財産の中長期的な成長を目指すのだといいます。

運用報告書を見ると、収益分配は当期の収益をほぼ全額分配しています。タコ足分配にはなっていないようですが、収益を外に出してしまうのですから、非課税での複利のメリットを享受できなくなります。

また、その信託報酬は1.545 %とかなり割高・・・。とても中長期の投資に適しているとは思えません。

運用会社としては、毎月分配型の代替商品として高齢者層を取り込む狙いがあるようですが、こんな投資信託を対象商品としてOKを出すとは信じがたい。

仏作って魂入れずです。

最後に


今後、成長投資枠の対象商品は年末にかけて発表されていき、最終的には2000本程度になるといいます。

制度の趣旨を逸脱するような投資信託が選ばれないことを祈るばかりです。

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コメント

非公開コメント

No title

新NISAで選べる投信信託の数が多すぎますね。
積立NISAや新NISAをきっかけに資産運用を始めようと思っている人が選びやすいようにして欲しいものです。

分配金型の投信信託ですが信託報酬が高いものは駄目ですが、積上げた資産を使うフェーズであれば1,800万円の枠を維持しながら分配金を生活費に充てるために 分配金型の投信信託もアリかなと思いました。(資産を増やす過程では再投資の観点から分配金型はナシです)

Re: No title

コメントありがとうございます。

隔月分配の投資信託が新NISAの対象となったのは高齢者への配慮なのでしょうね。

とはいうものの、分配金の原資がどうなっているか理解できている高齢投資家がどの程度いるものか・・・と考えると、心もとないです。

せっかく良い制度を作ったのだから、骨抜きにならないようにしてもらいたいと願うばかりです。