英国病と日本病、重病なのはどっちなのか?

イギリスはかつて1960年代から1980年代にかけ、英国病とも呼ばれる衰退を経験し、その後回復しました。
それと入れ替わるかのように、今度は日本が日本病に罹り、今もってそれは治癒せず日本経済は衰退の一途を辿っております。
英国病の頃の日本は、低迷するイギリスとは裏腹に高度成長時代であり、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったといってよいでしょう。
ジャパンアズナンバーワンなどと言われて有頂天となり、日本の成長はとめどなく続くような錯覚に陥っていたといえます。
イギリスの衰退など対岸の火事であり、残念ながら他山の石とすることはできませんでした。
さて、日本は今も日本病から脱していないわけですが、日本病は英国病に比べてどうなんでしょうか?英国病を上回る病に侵されているのか、気になるところです。
英国病とはいったい何か
イギリスは第二次世界大戦後、多くの産業を国有化しました。
国有化などの産業保護政策は1960年代になると、国内製造業への設備投資を減退させることとなり、資本は海外へ流出し、他国の技術開発に後れを取るようになっていきました。
また、国有企業は経営改善努力をしなくなっていき、製品の品質が劣化していったため、イギリスは国際競争力を失っていき、輸出が減少し、輸入が増加して、国際収支は悪化していきました。
特に多くの労働者を抱えていた自動車産業は、ストライキの慢性化と日本車の輸出が活発化した時期が重なったことで壊滅的な状況となってしまいました。
もはやイギリスにはメジャーな自動車メーカーは残っていません。これが英国病といわれるものです。
なんだか、1990年代以降の日本に似ているような・・・。
イギリスと日本
実際のところ、イギリス経済の動向はどうだったのでしょうか。
1960年代から最近までの実質経済成長率は以下のとおりです。

(出所:graphtochart)
確かに1960年代から1980年代までにマイナス成長の年が4年もあります。
一方、1990年代以降の日本はどうでしょうか。

(出所:graphtochart)
マイナス成長が6年もあるし、成長している年の山もイギリスより低いように見えます。
日本病の深刻さよ
わかりにくいので、日本とイギリスを同じグラフにし、近似曲線を加えてみました。

日本のデフレ期のほうが、英国病時のイギリスよりも病状は悪いようです。
日本病はかなり深刻であり、英国病よりも重症であるという印象を受けます。
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日本病が重症化した原因
なぜ日本病はかくも重症となり、また治癒しないのでしょうか。
その原因を探るには、日本病の原因を探らねばなりません。まず1つめとしてはバブル崩壊です。
バブル期は、猫も杓子も不動産を担保に金を借り、不動産に投資するなどといったことが行われました。値上がり目当ての投機であり、ひたすらこのサイクルを回していました。
しかし、あっけなくバブルは崩壊・・・。借金の金額は減らないのに、保有する資産の価格は暴落し、資産を処分しても借金だけが残ってしまいました。
その後は働けど働けど、借金返済に追われ、通常であれば消費に回るお金が借金返済に回ってしまいました。
借金を返済しても、GDPは増えない。というわけで、日本経済は縮小均衡を続けたわけです。
放っておけば死に至る病
民間経済が委縮している中、本来であれば、最後の消費者たる政府が財政拡大を続ける必要がありました。
しかしながら、政府は財政均衡を優先し、民間と同様に合成の誤謬に陥ってしまいました。
民間が合成の誤謬に陥るのは理解できる。そうしなければ生き残れないからです。しかし、政府が合成の誤謬に陥るのは理解不能です。政府は、通貨を発行することで資金繰りに瀕することはありませんから。
また、民間が委縮しているにもかかわらず、さらに委縮させるような愚策が繰り返されました。
典型例が消費増税でしょう。
現状、日本経済がなんとか持ちこたえているのは、アベノミクスの遺産によるものだといえますが、岸田政権はその遺産を食いつぶし、増税路線を突き進んでおります。
岸田政権が長期化すれば、日本経済は再びデフレの悪夢にうなされることとなるのは必然なのです。
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