地方銀行、金利上昇で債券の含み損が膨らむ。赤字行も出始めた

銀行の貸出は増えています。
しかし、貸出の伸びが増えるという好影響以上に金利上昇にともなう債券価格の下落の悪影響が大きくなっているようです。
金利上昇で全国の銀行が保有する国内債券や外国債券、投資信託などの含み損が増加しているのです。
その中でも地方銀行の含み損が目立ちます。地銀97行の含み損は2023年9月末時点で約2.8兆円となっており、2023年6月末から7割も増えてしまいました。
いったいなぜなのでしょうか。
銀行貸出=日本経済の縮図
銀行の貸出金の量を見れば、日本経済の変遷が一目でわかります。

(出所:日本銀行)
まさにデフレ元年ともいえる1997年あたりから銀行の貸出は急減し、2004年あたりに底打ちしました。
その後、アベノミクスの影響で2013年あたりから急回復していることがわかります。
貧して鈍した金融業界
とはいえ、異次元金融緩和によるマイナス金利で、銀行の利ザヤは極端に小さくなりました。
そのため、マイナス金利政策が導入された2016年以降、とりわけ銀行の収益は逆風にさらされていたといってよいでしょう。
利ザヤを稼げなくなった銀行は、年寄りに手数料の高い投資信託や保険商品、仕組債などの金融商品を売りつけて糊口をしのいでいたというわけです。
2022年からの金利上昇という逆回転
ほかに銀行の収益を支えたのは、日銀による国債の買入です。
金利をマイナスに抑えるために、損失覚悟で日銀が銀行から国債を買ってくれる。銀行としたら国債がいくら高くても買っておけばいい。もっと高い値で日銀が買い取ってくれるから利益が転がり込んできます。
しかし、2022年からの金利上昇はこれまでの流れが一気に逆転することとなりました。
金利上昇により保有する債券の価格が下落し、評価損を抱える銀行が多くなったのです。
2023年9月末における地銀97行のその他有価証券の評価損益の集計では、株式も含めた全体の評価損益で50行が含み損となり、2023年6月末の32行から増加しています。
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国内債券は軒なみ評価損
特筆すべきは国内債券であり、国債を中心とした国内債券の含み損を計上したのは、地銀ほぼすべての92行となっています。
2023年7月の日銀の政策修正による長期金利の上昇で、国内債券の含み損がわずか3か月で2.5倍に膨らんでしまいました。2021年12月末時点では含み益だったにもかかわらずです。
一部地銀はさらに損失が膨らむ前に処理をしたため、7行で本業赤字に陥りました。
地銀の甘いリスク管理
先進的なリスク管理を行っているメガバンクに比べて、地銀のリスク管理は甘い。
現に、地銀は国内債券のデュレーションがメガバンクに比べて長期化しており、金利上昇の影響を大きく受けることとなりました。
今後も日本の金利は上昇する可能性が高いと思われ、地銀にとっては厳しい経営環境が続きそうな気配です。
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