ストック・オプションが格差拡大に拍車をかけた

取引所



1947-1975年まで、アメリカ人の平均的な労働者の労働生産性は98%上昇し、実質賃金も95%上がっています。
ところが1976-2013年までは労働生産性は85%くらい上がっているのに平均給与は4%しか上がっていません。

これはいったいどんな要因によるのでしょうか?

多角的な複合要因からもたらされた結果であるとは思いますが、その中の大きな要因の一つとして「ストックオプション」の導入が挙げられるのではないかと考えています。

■ストックオプションとは・・・


株式をあらかじめ定められた価格で取得できる権利をいいます。

会社が役員や従業員にあらかじめ定められた価格(権利行使価格)で自社の株式を取得できる権利を付与します。

役員や従業員は、将来株価が上昇した時点で権利を行使します。

その後、時価で株式を売却することで権利行使価格と株価上昇分との差額が利益として得られるという報酬制度です。



アメリカでは、1960年代から経営者の報酬体系の一部としてストックオプションが広く使われています。

大量のストックオプションが付与された経営者はどんな行動に走るのでしょうか。

そう、会社経営の目的が自社の株価を上げることに集中していくことになります。

自分の任期中に利益を増大させ、ただただ株価を上げようとするのです。

それにはどうしたらいいのでしょうか。

あらゆるコストがカットされ、近視眼的に利益の増大を図るのです。

人件費もまたコストの一つ。

人件費を抑えて、利益を上げれば株価が上がるので経営者はストックオプションを行使して多額の報酬を得ることができるのです。

ストックオプションという仕組み。

これは従業員にも付与できますが、経営者とはその株数に雲泥の差があります。

かくして、経営者と従業員は分断されてしまったのです。

これが、現在のアメリカの巨大な格差社会の大きな要因となっていることは間違いないと思います。

日本でも1997年からストックオプションが解禁されています。

上場企業の多くがこの仕組みを取り入れています。

しかし、行き過ぎた利用はアメリカ同様、格差を広げる元凶になりかねません。

経営者と従業員との株数にあまりにも差をつけないようにするなど節度ある活用が望まれます。

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