袋小路にはまりつつある地方銀行の収益モデル

上場している地銀、第二地銀の平成30年度第3四半期までの決算が出揃い、3行が最終赤字に転落してしまいました。
主な原因はやはり超低金利が継続していること。貸出は思うように増えず、貸出先があったとしても怒涛の低金利で利ざやが稼げない状態です。
約8割の地方銀行が本業たる貸出業務で赤字になっており、有価証券運用収益と手数料収入で黒字にしている状況です。
バブル崩壊以降、民間企業は設備投資には慎重となっており、お金を借りてまで投資をしたいという企業が減少しています。内部留保を大きくした無借金企業が増加の一途をたどっています。資金需要が少ない中での貸出競争となると、いかんせん金利の引き下げ合戦により利ざやが縮小してしまいます。
民間企業が金融機関に支払う利息はバブル期には40兆円におよびましたが、直近では7兆円程度と激減しています。ここ数年の日銀の大規模金融緩和という変化に銀行の経費削減が追いつかず、国際的に比較しても低収益性が目立っています。
金融機関にとって最大の経費はやはり人件費。日銀の政策に合わせ、大規模給与カットというわけにはいかないからです。
貸出に回せない余剰資金をなんとかうまく運用して収益を確保したいと考えるのは当然のことですが、国内債券では利回りが悪すぎるので、金利リスクに加え、為替リスクを取って海外債券に投資している銀行が多いようです。しかし、それもうまくいくとは限りません。アメリカの長期金利が昨年秋に上昇したことで、債券価格が下がってしまい損を出した銀行もあります。
長引く低金利が銀行の体力を奪っていく中で、従来型の収益モデルに加え、新たな収益の柱を育てる必要がありますが、こちらにも逆風が吹いています。
顧客本位の営業が求められているため投資信託の短期売買を顧客に勧めることが出来なくなってきていることが一つ。また、今後若い世代はネットでの投資信託購入が主流になっていくことから、販売手数料の低廉化が加速していくことは間違いありません。
そして昨今、手数料の高い外貨の保険販売に注力する銀行が多いようですが、説明不足などによる苦情が増加しており、当局が問題視しています。今後、新たな規制が取り入れられる可能性もあり、銀行も行き過ぎた販売は自粛せざるを得ないでしょう。
メガバンクに比べ、国際化が難しく収益の多様化が進んでいない地方銀行は今、袋小路に陥りつつあります。経済状況が変わらなければ真綿で絞められていくように最終赤字となる地方銀行はますます増加していくことは間違いありません。
学生の就職についても不人気となっており、2019年就職希望業界ランキングで8位に転落したそうです。逆に驚かされたのが、2009年から2018年まで銀行がトップだったということ。今の学生は相当に安定志向で保守的になっているようです。換言すれば現実的ということでしょうか。
それにしても銀行業界に夢があるとはとても思えないのですが・・・。その中でも8位とは健闘といえば健闘といえなくもありません。ということで優秀な人材確保も難しくなってきており将来の人材不安も高まります。給料も今までのように高水準というわけにはいかないでしょう。
生き残りをかけた合従連衡と収益モデルの再構築が急務だと思います。
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