人手不足を価格転嫁できる業界とできない業界

少子高齢化の影響で、最近10年間で、生産年齢人口(15歳~64歳)が1割減少しました。世界的にこの傾向は見られますが、日本はその先端を走っています。

(出所:社会実情データ図録)
10年で会社の社員が1000人から900人に減ってしまったと考えればわかりやすいでしょうか。
そのおかげで一人当たりの仕事は増えて過労社会が進展しましたが、この4月に残業規制が始まるため、過剰な残業に頼るわけにもいかず、人を雇おうという動きが活発です。
現に有効求人倍率は好調で、高度成長期にも迫る人手不足になっています。また、それに呼応して失業者の数も減っています。

人手不足の中で人材を獲得するには給料を上げていくほかありません。当然、企業にとっては人件費負担が増加しますので重い負担です。
人件費の増加分を提供するサービスや製品の価格に上乗せできるかどうか、それが会社の明暗を分けていくことになります。
価格転嫁ができない業種の典型は小売業です。参入障壁が低く、競合が多すぎて強気の商売ができません。値上げすればすぐにお客は他に流れてしまうので、チキンレースを続けるしかない状況です。
もっとも、その店にしかない魅力的な商品やサービスがあれば話は別になります。いわゆる差別化です。ブランド力を持つ企業は強いですね。
一方で、価格転嫁が可能な業種としては陸運業界が挙げられます。
全国ネットの物流網など一朝一夕に構築できるはずもなく、参入障壁が高くて、競合も限られているので、強気の商売が可能です。
業種別株価指数を見てもその差は明らかです。
陸運業はこの1年で10%値上がりしているのに対し、小売業は5%の値下がりをしています。
このような状況を見るにつけ、日本のデフレ脱却は本当に難しいと感じます。多くの人間は一度安い買い物をしてしまうとそれに慣れてしまって高いものは買わなくなります。
行動がパターン化してしまうので、それを覆すのには相当の時間を要することになるでしょう。
日銀が2年間で2%のインフレ目標を達成すると宣言したとき、誰か忘れましたが外国のエコノミストが15年はかかると言ったとか。まさにそのような状況であり、民間需要が期待できないのだから、政府主導の財政出動に期待するほかありません。
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