節税保険、いったい何が問題視されたのか

好業績の中小企業が一時的に利益を圧縮し、納税額を減らしたいというニーズと、保険を売りたい保険会社のニーズが合致して、2017年の春に登場した中小企業向けの経営者保険。
節税メリットを強調した煽り売りを当局(金融庁、国税庁)が問題視したことから、保険会社各社は相次いで商品販売を自粛しました。
いったい何が問題視されたのでしょうか。
金融庁と国税庁では立場が違うため、焦点は異なるものの苦虫を噛み潰している点では同じです。
■そもそも経営者保険とは・・・
中小企業が契約者となり、経営者が死亡すると数億円単位の保険金が支払われる保険です。経営者に依存することの多い中小企業にとって、カリスマ的経営者が亡くなった場合のダメージを抑え、次世代経営者にバトンタッチするための保険と考えればいいでしょう。
保険料は全額損金参入でき、途中で解約した場合も保険料の大部分が戻ってくるという仕組みになっています。
■金融庁は何を問題視したのか?
金融庁はすべての保険商品について個別に認可を出しています。その際、保険会社は金融庁に対し、保障を目的とした商品であると説明しながら、販売実態としては途中解約を前提とし、節税メリットを過度に強調した販売となっていたことです。
金融庁としては騙されたという心境でしょう。
金融自由化により、保険会社の運営費用(付加保険料)が自由化され、各社の競争により付加保険料が下がる(契約者の保険料が安くなる)ことが期待されています。
しかし、節税保険では付加保険料を高くするほど、契約者の節税メリットも増すという事態が起こりました。
当初の目的とまったく逆方向に進んでしまったことも金融庁にとっては苦々しいものとなりました。
■国税庁は何を問題視したのか?
国税庁にとっては税収が減るのは何より癇に障ることです。節税保険は途中で解約すれば大部分の保険金が戻ってくるのに、保険料が全額損金参入できるというのはおかしいという立場です。
そのような保険であれば、損金でなく資産として処理されるべきではないかというのが国税庁の立場です。
経営者保険は付加保険料が高いこともあり、保険販売店に入る販売手数料もかなり高くなっていたようで、それが販売業者の営業推進にも大いに影響を与えていたことは間違いありません。なにしろ初年度の保険料の8割が手数料として支払われるような商品もあったということです。
当局の厳しい姿勢を受け、保険会社は4月から商品内容を改定し、節税メリットを抑えたものにするようです。
何事も過ぎたるは及ばざるが如し、出る杭は打たれる、といったところでしょうか。
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