追加型投資信託の分配金原資についての考察

コイン



いまさら感はありますが、投資信託の分配金についての話なのです。

人間の不合理さ

人間というものは必ずしも合理的な行動をするとは限りません。1年後に2万円もらえるとしても今1万円をもらえるなら、今の1万円を選ぶ人間は少なからず存在します。そして私もそのような人間の一人なのです。

このような人間の不合理性という側面を含め、人気を集めてきたのが、いわゆる毎月分配型の追加型投資信託でした。毎月もらえる年金のようなものと考えられ、お年寄りも好んで購入していました。(今も購入している方は多いと思います。)

しかし、その分配金は当期に発生している収益以上の金額であることが多く、一度分配金として放出してしまうと複利効果が働かないことから長期的な資産形成には向かないと当局が考えていることはご承知のとおりです。

分配金についての検証

では、実際にJリートに投資している某追加型投資信託の分配金動向について検証してみましょう。

3月30日現在の基準価額は5,273円。年間の収益分配金は80×12=960円でした。960円÷5,273円×100≒18.2%。分配金利回りは税引前で18.2%にも及びます。

しかし、Jリートの実際の利回りは高いものでも6%ちょっと。低いもので3%程度。平均すると4%強程度です。一体なぜ18%もの分配が可能となるのでしょうか。

そこで、収益分配金の原資を調べておく必要があります。分配金の原資となるのは以下の4つです。

(a) 配当等収益
(b) 売買益および評価益
(c) 分配準備積立金
(d) 収益調整金


(a)と(b)は簡単に理解できます。
(c) は(a)と(b)のうち、今まで分配金として支払わずに積み立てたものです。

では、(d)の収益調整金とは一体何でしょうか?

・既存の投資家への分配可能額が追加設定により希薄することを防ぐために設けられたもの。
・口数が増加すればファンドの運用収益に変化がなくても、口数あたりの分配原資が薄まる。こうしたことを防ぐために設けられた会計上の項目


などと説明されていますが、イメージが湧きづらいですね。それでは簡単に考えてみましょう。

①Aさんがあるファンドを基準価額10,000円で購入しました。
②1か月後に基準価額は13,000円となり、分配可能額は3,000円となりました。
③同じ日、Bさんが13,000円で新たに購入しました。
④このとき、分配可能額3,000円を2人で分けると1,500円ずつになってしまうのか・・・?


ということです。

Aさんはこう思うでしょう。

「自分の分配可能額が突然3,000円から1,500円になってしまうのか?いままでの13,000円が11,500円になってしまったじゃないか」

Bさんはこう思うでしょう。

「買ったとたんに1,500円の分配可能額まで手に入るとは。13,000円がとたんに14,500円になってラッキーだ」

でも実際にはこのようなことは起きません。Bさんの購入代金の13,000円のうち、3,000円を収益可能額として計上するのです。これが収益調整金と呼ばれるものです。これにより、2人で分けても3,000円ずつの分配可能額を確保するのです。

分配金の原資について

では、某追加型投資信託の分配金の原資について見てみましょう。

直近の運用報告書によれば、半年の累計分配金のうち、半年間で発生した収益から支払われた分配金はわずか88円でした。上記の(a)と(b)に該当する部分です。残りの386円は当期の収益以外から支払われています。上記の(c)と(d)に該当する部分です。(小数点以下がカットされているので足しても480円にはなりません。)

半年間で発生した収益を年利換算すると3.4%程度となります。信託報酬が0.8%弱なので、足すと約4.2%。Jリートの平均利回りとほぼ一致します。

それでは一体なぜ、そこまで分配金を支払うのでしょうか?ここからは完全に個人的見解です。2つ考えられます。

1つには、分配金を下げると売れなくなってしまうからと考えるからです。上記のような事実を知らず、分配金利回りだけに目をくれる人がいてくれれば一定程度の販売は確保できるでしょう。分配金を大きく下げれば解約が殺到するのは目に見えています。

もう1つは、運用するよりも投資家へ返金したほうが、投資家にとって有利だと考えているからです。よりよい収益機会が得られなければ返金し、投資家自身に新たな投資対象を見つけてもらいたいと考えるのです。

私は運用担当者でも運用会社でもないので真の理由は知る由もありません。

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