ドイツ銀行、コメルツ銀行との合併破談で潜在リスク継続中

こんなにあっさりと決裂するとはある種驚きですらあります。
経営危機説もささやかれるドイツ最大手のドイツ銀行と、同じくドイツのコメルツ銀行の合併交渉が決裂しました。しかもドイツ政府主導での交渉だったというのに。
合併協議が報じられてからまだ1か月ちょっとくらいしか経っていません。
| いったいなぜ?
決裂の主な理由は労働組合の反発。両行の従業員は合計約14万人。合併によるリストラで、3万人が人員整理されるとみられており、労働組合からの反発を招きました。
また株主からも合併の効果に疑念の声が上がっており、利害関係者の理解を得ることができず、あっさり決裂となってしまいました。
| ドイツ銀行の今後は?
ドイツ銀行は2019年1~3月期決算、コスト削減で黒字を確保したものの単独で再建を果たすことは容易ではありません。
なにより、ドイツ銀行は巨額のデリバティブ取引残高を抱えており、金融市場に波乱があれば、一気にその損失が表面化しかねないという大きな爆弾を抱えています。
この爆弾が破裂すれば、リーマンショック級の衝撃が世界に走ることになりますから、株価暴落の再来が現実味を帯びてきます。恐い。なんとしてもソフトランディングしてもらいたいです。
爆弾を抱えた主力の投資銀行業務が不調のうえ、国内リテール業務でも激しい競争にさらされ、採算度外視の運営を強いられています。なにしろドイツでは、公的金融が約4割、信用協同組合が約3割を占めており、銀行のパイが小さい。
そのうえ、ECBの超低金利政策で利ざやが縮小し、収益基盤が脆弱になっています。もともヨーロッパの銀行は自己資本比率は総体的に低く、経営基盤も脆弱です。
ドイツ銀行は堅調な資産運用部門と、不調な投資銀行部門を切り離して経営再建を図るなどの方策を検討しているようです。
| ドイツ政府やコメルツ銀行の動きは?
ドイツ政府は依然として、ドイツには世界的な競争力のある銀行が必要と訴えています。しかし、上記のとおり、ドイツ銀行が単独で再建を果たすことは容易ではありません。
一方、今回、合併協議が決裂したコメルツ銀行も経営は不振で、国外の大手行(オランダのINGグループなど)が関心を寄せており、再編の動きがくすぶっています。
それにしても強国ドイツの2大銀行が経営不振なのか?
ドイツには過剰ともいえる金融機関が存在しており、低金利による過剰競争が銀行の体力を奪っています。当然、大手2行に限ったものではありません。
日本の銀行業界と似た構図となっていますが、バブル崩壊を経験した日本の金融機関のほうが再編が一歩進んでおり、ドイツは日本の後を追っているという印象です。
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