コンクリートのマンションに住むとラドンで肺がんに?

地球2



先日、クローバーネットTVというインターネット放送で、武田邦彦先生が話していたことはまったく初耳でした。また真偽のほどやその影響度合いもわかりません。

コンクリートの建物(とりわけ低層階)に住むと肺がんになりやすくなる可能性があるというのです。その原因といわれているのは「ラドン」です。怪獣ではありません。ラドン温泉などという言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

私自身、マンションに住んでおりますので非常に気になる話です。そこで調べてみることにしました。



ラドンとは


ラドンは人間が暮らす通常の温度では気体です(元素記号Rn)。色もにおいも無いため、人間はその存在を感知することはできません。

地中の岩石や土にはウランが含まれており、ウランは放射線を出して別の原子に変わります。その原子も放射線を出してさらに別の原子に変わって行きます。

このように次々と原子が変わって行き、最後に放射性ではない鉛になります。

ウランが鉛に変わるまでの間にラジウムからラドンができます。ラドンは他の原子と化学結合しないため気体になり、お湯に溶けたり、空気中に飛び出します。

岩石や土にウランが含まれているため、あらゆる地表からラドンが出て空気中をただよっています。自然放射線の約半分は、ラドンの放射線によるものです。

昨今のがん事情について


ちょっと見にくくて恐縮ですが、下記の左側のグラフは日本人の性別年齢別の喫煙率の推移を示しています。

20190505gan.jpg
(出所:クローバーネット 武田邦彦ギャンブル礼賛「笑って暮らして、医者知らず」2019年5月3日配信分より)

禁煙社会が進展していく中で、日本人男性の喫煙率は右肩下がりで減少しています。女性はもともと喫煙率が低かったため、ほぼ横ばい傾向が続いています。

さて、今度は右のグラフを見てください。これはがんによる死亡者数の推移を表しています。

同じがんといっても、部位によって死亡者数の増減はかなり違います。胃がんは横ばいなのに対し、肺がんの伸びは著しくなっています。

データから読み取れること


一般的にタバコは肺がんの原因になるとされています。よって、喫煙率が下がれば肺がんも減ると考えるのが普通です。しかし、喫煙率が下がっている中でも、肺がんによる死亡者数は右肩上がりで増加しています。これは確かに何かおかしい。

さまざまな仮説が考えられます。

・タバコと肺がんにはそもそも因果関係がなく、他の因子があり、それが増加している

・他のがんの治療方法が進歩しているのに肺がんはあまり進んでいない。そのため、がんになる人の数は変わらないが肺がんで死亡する人が多い(このデータだけでは読み取れませんが)

・他のがんは見つけやすくなったのに肺がんは見つかりにくい。そのため、肺がんは致死率が高い

・高齢化が進む中でとりわけ肺がんは高齢者がなりやすい

・昔は死因がはっきりせず、肺がんで死んだのに肺炎で死んだなどと勘違いをしていた

など。

私は専門家でないため、何が正しいかは正直わかりません。今回、武田先生が指摘したのは、1つめの他の因子の増加のことを言っているものと考えます。私も1つめの可能性が高いと思います。

放射線とがんの関係


放射線を多量に浴びるとがんになるといわれます。ではそのメカニズムはどんなものなのでしょう。

放射線が細胞内の遺伝子にあたると、遺伝子が傷つきます。少量であれば、人体の免疫機能により、その傷は修復されます。

しかし、多量の放射線を浴び、遺伝子の損傷が多くなると修復しきれなくなったり、誤って修復され、がん化されるものが出てきたりします。

でも不思議なのはがんになると放射線治療というものが行われる場合があることです。放射線はがんの原因なのになぜ放射線を浴びせるのでしょうか。

これはまさに放射線が遺伝子を傷つけることを逆手にとった治療法です。がん細胞に放射線をあて、その遺伝子に損傷を与え、がん細胞を殺してしまうのが目的です。

正常な細胞にも影響を与えますが、がん細胞は通常の細胞に比べ回復力が遅いため、繰り返し照射することで、がんをやっつけてしまおうというわけです。がん細胞はやがて修復不可能となり死滅するというわけです。

放射線治療はこの正常細胞とがん細胞の回復力の違いを生かして行うがん治療です。また、なるべくがん細胞へ放射線を集中させることで通常細胞への影響を低く抑えられます。

コンクリートとラドンの関係


さて、地表には放射性の気体であるラドンは常にある程度存在します。では、コンクリートがラドンをより多く発生させるメカニズムはどんなものでしょうか。

コンクリートに含まれる砂利や砕石には少量ながらラジウムが含まれているため、コンクリートの建物ではラドンの濃度が高くなっています。

四方八方が岩石に囲まれているような格好になるので、木造や鉄骨作りの家に比べてラドンの濃度が上がるというわけです。濃度が上がれば当然、呼吸することで肺に取り込まれるラドンも多くなります。

肺に取り込まれたラドンが放射線を出し、肺の中の細胞に放射線を浴びせることで遺伝子が傷つくものと考えられます。

なぜ低層階の影響が大きいか


武田先生の話では、1階や2階はラドンが多いということでした。でも何階であっても、コンクリートに囲まれていることに変わりはないはず。では、なぜ低層階は影響が大きいのか?が謎です。

この点についてははっきりとわかりませんが、地表からのラドンの影響を受けやすい上に、建物の基礎部分にはより大量のコンクリートが流し込まれるため、中高層階に比べ、より多くのラドンにさらされるといった理由が考えられます。

それにしても喫煙とがんとの関係はあらゆるところで宣伝されますが、ラドンとがんとの関係についてはテレビなどで取り上げられたことを見たことがありません。

今や日本人の多くがコンクリートの中に住んでいるし、これからもマンションを売っていかなければならないディベロッパーにとって、因果関係が明確でない中で大々的に報道等をされてしまっては影響が大きすぎて、たまったものではないからだと考えられます。

結論と対策


さて、本当のところどの程度、ラドンが肺がんと関係しているのでしょうか。

国によって室内のウラン濃度が異なるとされており、その中でラドン濃度が高いスウェーデンで肺がんが多く発生しているかどうかが判断材料になると考えました。

20190505gan2.jpg

(出所:大阪警察病院 呼吸器科)

特にスウェーデンが際立っているということはありません。他のデータではスウェーデンのほうが他諸国よりも低レベルというものもありました。もっとも、スウェーデンのラドン濃度が本当に高いのかにも疑問は残りますが。

ただ、ヨーロッパの調査ではラドンと肺がんのリスクの関係が有意に高いという論文が発表されていたり、アメリカの米国科学アカデミーが、毎年15,000から22,000人のアメリカ人が屋内のラドンが関係する肺がんで死亡していると推定するなど無視はできない感じです。

では、どうすれば良いのでしょうか。主な対策は3つです。

・部屋の換気をこまめにして、通気性をよくする

・免疫力を向上させ、がん化した遺伝子を早期に修復させる。具体的には暖かい風呂に入って、NKキラー細胞を活性化することが勧められていました

・これから家を買う、あるいは引っ越す人はなるべく、ラドン濃度が低い家に住む。買ってしまった人は仕方がないので上記2つで頑張る

結論:換気して風呂入って早く寝て気にするな!

【参考】低放射線被爆のリスク(学者同士のお互いに敬意を払った落ち着いた対論で非常に参考になります。)


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