銀行業界への逆風(逆ざやによる外債運用難)

アメリカでは、昨年後半、長短金利が逆転するという異様な状況に突入しました。現状は若干順ざやに戻ってはいますが、ほとんど金利差なしのフラット状態です。
このような状況が、日本の銀行に思わぬ影響を与えています。
ご存知のとおり、日本は超低金利で円建債券では運用してもほとんど利回りが得られません。やむを得ず、リスクを取って海外債券での運用を拡大しているのが、現在の日本の銀行の姿です。
具体的な方策としては、返済期限3か月などの短期資金をドル資金で調達し、長期のドル建債券を買うことで、利ざやを稼ぐという手法です。
この手法は長期の金利が短期の金利よりも高いという前提があるから成り立ちます。ところが、この前提が崩れてしまいました。
調達コストが運用利回りとほとんど同じか、場合によっては上回る(逆ざや)状態に陥ってしまったというわけです。
短期の調達資金は、3か月ごとに新たに調達しなおすため、過去に買った債券も同じような事になってしまい、利益が得られません。
今後、順ざやになるまで、銀行は米国債投資によって利益を上げられない状況に甘んじるか、あるいは売却して後始末をするか、のどちらを選ぶしかありません。
ここ30年間の歴史を振り返ると、アメリカの10年もの長期金利と短期金利(3か月)が逆転したケースは3回ありました。逆ざや状態は長くても1年程度で収まっているため、今の状況がいつまでも続くことはないとは思います。
それよりも不気味なのは、逆ざやになったあとに、いずれも景気が後退していることです。今回の逆ざやは例外となってほしいものですが、連休明けのアメリカ株の動きを見る限り、今回も例外ではなさそうな気配がただよってきています。
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