マネーストックとマネタリーベースとの違い

新聞



経済学というのは難解です。とりわけマクロ経済学は抽象的な感じがして、いったい何が正しいのか釈然としません。

例えば、「景気が良いからお金を使うのか」「お金を使うから景気が良くなるのか」と聞かれて、どちらが正しいかなんてわかるのでしょうか。

個人的には後者の比重が高いと思いますが、テレビなんかで景気が良くなったとか聞かされて、じゃ安心だと思ってクルマなどを買う人もいるでしょうから、どちらが100%正しいなんていえないわけです。

そこで経済学者やエコノミスト、評論家やらが延々と結論の出ない論争を続けるといった様相になるのだと思います。

しかし、論争の前提として、言葉の定義ははっきりと知っておく必要があります。言葉の意味や定義も知らずに他人と話したり、情報発信することはできないからです。馬鹿にされるのも嫌ですし。

ということで、小生の勉強の意味を兼ね、今回、マネーストックとマネタリーベースとの違いを調べてみることにしました。

 マネーストック

マネーストックとは、金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量をいいます。具体的には、一般法人、個人、地方公共団体などが保有する通貨の残高です。

日本銀行が公表するマネーストックは、対象となる金融商品の範囲や預入先金融機関等の違いによって、「M1」「M2」「M3」「広義流動性」の4つの指標からなりますが、代表的な指標はM3とされています。

M3は、M1(現金通貨+預金通貨)に、準通貨(定期預金)とCD(譲渡性預金)を加えたものです。

 マネタリーベース

マネタリーベースとは、日本銀行が供給する通貨のことです。具体的には、市中に出回っているお金である通貨の合計です。マネタリーベースの現金通貨は、マネーストックと異なり、金融機関の保有分が含まれます。

これは、マネーストックが金融部門から経済全体に対して供給される通貨であるのに対し、マネタリーベースは日本銀行が供給する通貨であるためです。

具体的には、市中に出回っている通貨と民間の金融機関が中央銀行に預けた日本銀行当座預金(日銀当座預金)の合計値です。

 考察

金融政策によって、日本銀行がマネタリーベースを増やせば、さらに金融部門から経済全体に通貨が流れてマネーストックが増えると考えて実行されたのが異次元金融緩和でしょう。いわゆる黒田バズーカです。

この考え方に与する人たちは「リフレ派」などと呼ばれています。

しかし、マネタリーベースを増やしても、思うようにマネーストックが増えないため、インフレ目標は異次元緩和を何年行っても達成されていないのが実情です。

下図は、マネタリーベースとマネーストックの推移です。マネタリーベースの増え方に比べて、マネーストックの伸びが鈍いことがわかります。

20190519money.jpg

なぜ?

考えてみれば素人でも推測できます。いくら日本銀行から金融機関にお金が流れても、お金を借りたい人が少ないからマネーストックは増えません。借りたお金は返さなければならないし、お金を借りて投資をして儲かるような経済環境ではないからです。

マネーストックがマネタリーベースの何倍かを示す比率を信用乗数といいますが、信用乗数は思うように増えていきません。要はお金が元気よくグルグルと回転していかないということです。

お金を刷りまくれば市中にお金が流れ出して、投資や消費が活発になって景気が良くなるというのは、一面正しいところもあるのでしょうが、それがすべてではなく、一部でしかないということでしょう。

結局のところ、金融政策だけでは限界があるということです。

日銀日記 五年間のデフレとの闘い [ 岩田 規久男 ]

価格:2,700円
(2019/5/19 18:34時点)




関連記事

コメント

非公開コメント