財務省が日本国債の安全性にお墨付き!!

ひまわり



1999年から膨張したITバブルはあっという間にはじけ、2000年から2002年にかけて景気が後退しました。そんな中、2002年にムーディーズ、スタンダード&プアーズなどの海外の格付け会社が日本国債の格付けを引き下げました。

その際、日本の財務省は海外の格付会社に反論ともいえる意見書を送っています。その内容を端的に表すと日本国債のデフォルトはありえないという一言に集約されます。

なお、驚くことにそれらの意見書は現日銀総裁であり、当時は財務省の財務官であった黒田東彦財務官が出しています。

2002年といえば今から17年前。今よりは財政赤字は小さかったとはいえ、国債の発行残高は右肩上がりで増えており、現在と根本的な状況は変わっていません。(2002年は平成14年です。)

20190602kousaizan.jpg
(出所:財務省)

国内では財政破綻の恐怖を煽りまくって増税、財政支出削減路線を突き進める中にあり、海外の格付機関には日本はまったくもって健全で大丈夫だと主張する。ダブルスタンダード、二枚舌もいいところです。

ムーディーズ、スタンダード&プアーズ、フィッチといった会社が相手ですが、量が多すぎるので今回はムーディーズに焦点を絞り、その意見書を見ていきたいと思います。

なお、これらの書面は今も以下の財務省のWEBサイトで閲覧可能ですので、ご興味のあるかたは是非ご覧ください。
https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/index.htm

財務省のWEBサイトからいつ削除されてしまうかわからないので、保存しておきたいと思います。なお、私がポイントと思ったところは赤太字に加工しております。



【2002年5月2日】外国格付け会社宛意見書要旨


1.貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい。  

(1)日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。 

(2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。 例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。

・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国

・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている

・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高

 
(3)各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。

・一人当たりのGDPが日本の1/3でかつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。

・1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。

・日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。
 
2.以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではないということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめとする各般の構造改革を真摯に遂行している。同時に、格付けについて、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必要としている。

【2002年5月23日】ムーディーズ宛返信大要


1.貴社の説明は依然定性的であり、デフォルト・リスクや国際比較についての具体的・定量的説明が不十分。格付けがデフォルト・リスクを差別化して分類している以上、単に、一国の経済・財政状況や政策の方向性の記述ではなく、格付けの差の客観的理由を説明すべき。説明の欠如は、ソブリン債の短い歴史や統計的正当性の不足ともあいまって、ソブリン債の格付けの信頼性自体への疑問を増大させよう。貴社のソブリン債のデフォルト・リスクの計測に際しては、財政指標以外の経済のファンダメンタルズ等の要素はどの程度考慮されているのか。   

2.貴社は日本国債のデフォルト・リスクとして、「将来の政府は国債に対する利子課税や資本課徴金、または債務リスケジュール(返済繰り延べ)を行う可能性がある」と説明している。しかし、このような想定は、日本のマクロバランスや国債の保有状況等を考慮に入れた場合非現実的であり、タイムスパンを明記しつつ、具体的にどのような事態が生じうるのか敷衍が必要。
  
次のような要素は貴社の分析でどう考慮されているのか。

(1)日本国債は現在95%が国内でかつ低金利で消化されている。また、2001年は、一般政府部門の赤字32兆円に対し、民間の貯蓄超過は42兆円である。更に、経常収支の黒字はしばらく継続し、資本逃避のリスクも小さい。従って、資金フロー上の制約はない。 

(2)近年自国通貨建て国債がデフォルトした新興市場国とは異なり、日本は変動相場制の下で、強固な対外バランスもあって国内金融政策の自由度ははるかに大きい。更に、ハイパー・インフレの懸念はゼロに等しい。

(3)貴社が示唆する債券保有者への負担の強制は、居住者が国債の95%を保有していることを考えれば、自国民への実質的課税に他ならない。通常の財政健全化策を疑問視する一方、金融市場を大混乱に陥れるような手段が採られると想定するのは非現実的。

3.国債は最終的には将来の税収で償還されるので、各国経済のファンダメンタルズの評価は極めて重要。各国のデフォルト・リスクの相対比較でこの点がどのように考慮されているかについて、貴社の説明はなお不十分。
 
(1)貴社の「定量的比較」はほとんど財政赤字の大きさに関連したものばかりである。貴社は、マクロバランス、強固な対外ポジション等は考慮しているとしながら、それぞれの要素がどのように、どの程度考慮されているかは引き続き不明確。

(2)マクロバランスとの関係で、財政の持続可能性がどのように比較されているかも不明確。例えば、貴社は「日本の大きな国内貯蓄は実質金利を通じて間接的に考慮されている」としている。ならば、日本では十分な民間貯蓄が財政赤字を補って余りある結果、日本の実質金利は相対的に低いということになる。すなわち、貴社の見方によっても、日本の財政赤字は十分にファイナンスできている。

(3)貴社は、「政府の規模が大きいほどより容易に債務を負担できる」としているが、財政の持続可能性は、経済の潜在力や将来の担税力を考慮し、動学的な分析が必要。貴社の見解は、大きな政府がしばしば民間部門の発展を阻害するといった、財政と実体経済の連関を無視した非現実的なもの。

(4)貴社は、「対外部門は政府の外貨建て債の格付けとより関連している」としている。 ならば、日本の経常黒字、対外純資産、外貨準備は何れも世界最大であり、外貨建て債格付けはAAAでなければならない。結局は政府の支払能力が問われているのであるから、対外部門の強さは経済のファンダメンタルズの重要な要因として、自国通貨建て債にも反映されるべきである。

(5)他国の格付けとの整合性の説明も、当方が質した全ての例を財政赤字の相対的な大きさのみで正当化しようとしているために説得的でない。例えば、ポンド危機後の英国や80年代の「双子の赤字」に悩んだ米国の対外不均衡をどのように評価していたのか。また、貴社は日本の改革の必要性をしばしば指摘しているが、70年代の英国の改革をどう評価していたのか。ちなみに、貴社が英国の外債をAAAとした78年当時は、英国では30年近くにわたる経済の低迷が続いていた。その一方、サッチャー氏が首相となったのは79年であり、改革が軌道に乗ったのは80年代に入ってからである。この間の貴社の格付け基準は一貫していないように思われる。

【2002年7月25日】ムーディーズ宛返信大要


6月24日付けの貴書簡等によっても、残念ながら我々が従来から抱いていた貴社のソブリン債の格付けとその方法論に対する疑問点を解消するにいたっていない。

まず第一に、各国間の格付けの差の客観的な理由が引き続き説明されていない。デフォルト・リスクを反映しているというが、それなら各国についてどういうタイム・スパンで、どういうシナリオを想定しているのかを明確に説明すべきである。また、貴社の回答や公表資料では、各国政府の政策の方向性に関する記述はみられるが、それがどのように各国間の客観的な格付けの差につながるのかという説明が欠落している。

第二に、貴社も、ソブリン債の格付けに当たっては、財政指標だけではなく、経済のファンダメンタルズも考慮しているとしているが、貴社の回答や公表資料は、結局は単純に政府債務のGDP比率等を引き合いにして特定の格付け水準の結論を出している。格付けの説明変数は、財政指標のみでないはずである。国債の格付けに当たって、なぜ、財政指標がほとんど常に経済のファンダメンタルズに比し、圧倒的に重要であるのか、明確に説明されたい。

ところで貴社は、日本の政府債務が「未踏の領域」に入ると主張しているが、巨額の国内貯蓄の存在という強みを過小評価しており、また、戦後初期の米国はGDP120%超の債務を抱えていたし、1950年代初期の英国は、同200%近くの債務を抱えていたという事実を無視している。また、貴社の格付けは、日本政府の債務支払い能力に対する市場の信頼を反映した低い実質金利とどのようにして整合性をとっているのか説明がされていない。貴社の分析がマクロバランスを十分反映させていないことについては、市場関係者、エコノミストからも批判がある。

第三に、我々は、格付けは市場で重視されており、客観的で数量的な説明がないと市場をミスリードすることになると考えているからこそ、こだわっている。貴社の5月の格付け引下げを市場は無視したが、将来影響を受けることもあり得る。ある国の政府や企業が不当にダメージを受けたときには損害賠償の対象になりうる。

第四に、各国間の格付けの水準の差を決定する方法論について、財政指標以外の経済のファンダメンタルズをどう考慮したか、具体的な例を用いて敷衍していただきたい。貴社は、1970年代の英国の格付けが間違いであったことを認めたが、1980年代半ばの米国をはじめとする多くの国と日本の格付けが明らかに釣り合いがとれていないことについて、説明する義務があることは確かである。

最後に、私から2、3の点を付け加えておきたい。
まず、貴社は日本の強い対外セクターは外貨建て格付けに反映されるとするが、それならば格付けはAAAでなければならない。
また、貴社は、ソブリンの格付けは、標本数が少ないこともあって、その要素を統計的に有意な形で示すのは困難であると主張する。この主張は、ソブリン債の格付けの信頼性を著しく低下させるものである。それならば、デフォルトの前例のない先進国の格付けを行うのは無意味であり、格付けという形で示すのは、市場を無用に混乱させることになる。これを市場をはじめとして対外的に明確に公表すべきである。

我々は、貴社と意見交換を継続することを有意義と考えている。その際には、各国間の格付けの水準の差に関係する要素をより明確に評価することが不可欠であろう。



【まとめ】


それにつけても、国債の発行残高が増えれば増えるほど、金利が低くなっていく様は、日本に財政問題など無いことを如実に表しているといえましょう。

でなければ、とうの昔にインフレが深刻化して、金利が暴騰しているはずです。

これを見るにつけ、MMT(現代貨幣理論)を否定することはできなくなります。デフレ化の日本では、財政赤字など気にすることなく、国債をどんどん発行して公共投資を行って、景気に火をつけていく必要があると思います。

インフレにしようとしてもがいているのに、インフレが恐いといっている財務省は明らかに自己矛盾に陥っています。

10月の消費税を凍結しなければ、デフレからの脱却はますます遠のいていくばかりであり、今後の株価も期待できないでしょう。

【関連記事】
MMT(現代貨幣理論)とは?その信憑性は・・・
過去に財政破綻で債務不履行(デフォルト)となった国は?

財務省が日本を滅ぼす [ 三橋 貴明 ]

価格:1,512円
(2019/6/3 22:56時点)



目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】 [ 中野剛志 ]

価格:1,728円
(2019/6/3 23:18時点)




関連記事

コメント

非公開コメント