(仮説)「ユーロ導入が欧州の若者の職を奪った」を検証

ユーロ



最近、はやりのMMT(現代貨幣理論)によれば、自国通貨を発行できる政府は、デフォルトすることはなく、自国通貨建ての国債は、デフォルトすることはありません。
(MMTについてはこちらを参照してください。)

だから、自国通貨を発行できる国は財政破綻の心配をすることなく財政拡大することができます。

逆にいえば、自国通貨を発行できない国は景気が悪化しても、景気拡大のためにお金を刷って財政支出することができません。

ユーロ加盟国がその典型だといえるでしょう。それではユーロ加盟国の問題点を考えてみたいと思います。



 ユーロ加盟国が取りうる政策の限界


ユーロ加盟国は、いくら金融政策で景気を刺激しようとしても、ECB(欧州中央銀行)だけが通貨発行権を持つため、お金を勝手に刷ることはできません。

またユーロ加盟国は、年に3%以上の財政赤字を出してはいけないことになっているので、財政政策にも制約が課せられています。

アベノミクスに例えるならば、「金融政策」は自由に行えず、「財政政策」は強烈な制約の下で、こじんまりとしか行えないことになり、残るは「成長戦略」のみとなります。

成長戦略ほど難しいものはなく、法人税の引き下げ競争などを行えば、逆に税収が下がったりして、財政政策にさらに制約がかかることにもなりかねません。

要するにがんじがらめなのです。

 ヨーロッパの失業率


よくヨーロッパの若者の失業率はひどいといわれます(実際ひどいです)。

フランスの若年層失業率は20%以上、スペイン、イタリアでは30%以上という信じがたい数値になっています。

これは、共通通貨ユーロの導入による悪影響だと思うのです。

そこで、ユーロ導入前後のユーロ加盟国の失業率の推移を調べてみることにしました。

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ユーロ導入は1999年。その前後で大きな変化が起きているかと思えばそうでもないようです。

それでは若者の失業率だけに焦点を当てるとどのような結果になるのでしょうか。

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若年層失業率はユーロ導入後、右肩上がりで推移しているように見えます。

どうやら若者のみにしわ寄せが行っているように考えられます。

 若年層失業率が高い理由


でも、なぜ若者だけが失業するのか?

考えうる要因は2つです。

1.移民の増大による雇用競争の激化

ここ20年、ヨーロッパの移民は増え続けています。

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雇用のパイが増えない中で、移民として流入するのは若者が多いため、必然として若者による職の椅子取りゲームが激しくなったと考えられます。

また、職業経験のない者を雇うならば、より賃金の安い者を雇ったほうが得だということで、移民が優先的に雇われてしまうということもあるでしょう。

2.不況の調整弁にされている

以下のグラフは1999年以降の世界の経済成長率を表しています。黒線はイギリス、ドイツ、フランス、イタリアの合算です。

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日本はもちろんですが、ヨーロッパも相当な低成長に陥っています。

ところで、ヨーロッパ諸国は労働組合などの力が強く、解雇規制も厳しいため、安易に労働者の解雇ができません。

企業が人件費を圧縮するとなれば、新規雇用を少なくせざるを得ません。そこで、若者の雇用が奪われていると考えられます。

 まとめ


ユーロ導入は加盟国が取りうる政策の幅を縮小させ、景気後退時の対応を取りにくくしていると考えられます。

がんじがらめの規制の中で、なんとか国を維持していくために、若者を見捨てているという構図が見て取れます。

ヨーロッパの失敗は対岸の火事ではありません。幸い日本は今、若者の失業率は5%以下と相当に低くなっています。

今後も若者の職を奪わないためには、積極的な金融政策と財政政策が必須だと思いますし、労働力不足を移民労働者に頼るといった安易な政策をとらないことが重要だと結論づけられます。

(データ出所:社会実情データ図録(一部加工))

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