ゆうちょ銀行の投信不適切販売と無茶苦茶な高齢者勧誘ルール

老人



ゆうちょ銀行は顧客から預かる貯金の残高が180兆円という超巨大銀行です。

全国ネットで貯金をかき集めていますが、運用先がない。国債を買っても稼げないし・・・。融資はノウハウもなくそもそも法人向け融資が認可されていない・・・。

そこで、収益の柱の一つに掲げられたのは投資信託の販売。

2018年度の販売額は約9,000億円もの巨額で、ちょっとした地方銀行の預金総額くらいにもなります。ところが、その売り方が・・・。業界のルールを無視した不適切販売が蔓延していたのです。

しかしながら、そのルールとやらも複雑怪奇でいかがわしく、問題はゆうちょ銀行だけにあるとは思えないのです。



ゆうちょ銀行による投信不適切販売の実態


高齢者に投資信託に勧誘する際には、勧誘前に勧誘を行ってよいかどうかを事前に確認するといったルールが金融業界にはあります。

しかし、ゆうちょ銀行ではそのようなルールを無視して販売するケースが横行していたというのです。9割がたの店舗でそのような事例が発覚しており、その件数は1万5千にもなります。

ルール無視、不適切販売の原因はどこに?


ゆうちょ銀行は投資信託の販売の歴史が浅く、そのノウハウもまだ十分とはいえません。

しかし、そんなことはお構いなしに上から目標は降ってきます。販売現場からも、研修などの支援体制が整っていないという声が上がっているようです。

また、ゆうちょ銀行は金融庁の監督下に置かれた歴史も浅いので、それまでの延長で顧客との馴れ合いやいい加減さが如実に現れたと考えることもできます。

拠点数も多いので、研修をするといってもなかなか大変であることは間違いありませんが、今のご時勢、テレビ会議やらいろいろとやり方もあるでしょうから、同情の余地はごくわずかです。

そもそもルールの適切性はどうか?


さて、不適切とされるからにはその根拠となる法律なり規制なりがあるはずです。

今回の不適切事例の根拠となるものは、日本証券業協会が平成25年10月に出した「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」(名前からしてややこしい)です。

いくつかポイントを挙げていきましょう。

・高齢顧客とは

75歳が目安として示され、さらにより慎重な対応を行う高齢顧客として80歳以上が定義されています。

・勧誘前の事前承認が必要

高齢顧客に勧誘する前には、原則、役席者の事前承認が必要です。事前承認は顧客との面談等により実質的に判断されるべきものとされています。

・勧誘の定義

個別商品の説明を行うことが、勧誘にあたるとされています。よって、「投資信託はどうですか?おススメですよ」などといったセールスは勧誘ではないというわけのわからないルールになっています。

・ルール適用商品と適用外商品

金融機関は高齢者ルールが適用される商品(勧誘留意商品という)とそれ以外の商品を一定のルールの下で定める必要があります。

通常、リスクが高い商品をルール適用商品とすべきと考えますが、取引所に上場している株やリート、ETFはなぜか適用除外とすることができます。またインデックス連動の投信も適用除外とできます。

時々刻々と動く商品はルールにそぐわない、インデックスは広く周知されているなどといったもっともらしい説明がなされていますが、複雑なわりに抜け道だらけのふざけたルールです。

・勧誘場所による受注の方法

店頭に来店すれば、80歳以上の高齢者でも役席者同席のもとで受注できたりするのですが、訪問だと原則翌日以降に役席者が受注するというルールです。

翌日になれば価格が変わってしまうというのに・・・。時々刻々と変わらなくても日が変われば値段が変わるのだから前述の考え方とは矛盾しています。でも家族同席なら良しとか、もうわけがわかりません。

・約定後の連絡とは

80歳以上の場合は受注した後に再度連絡して確認しなければならないといった手の込みようです。まったく年寄りをバカにしているとしか思えないような過保護さ加減なのです。年寄りは昨日のこともすべて忘れてしまうとでも思っているのでしょうか?

複雑化した社会だからシンプルなルールを


顧客にとっても大いに迷惑になりうる理解不能の高齢者ルール。複雑ですし、例外やらもありすぎて、ゆうちょ銀行の行員には理解不能だったのかもしれません。

高齢者保護に資するのであれば、75歳以上の高齢者には一切勧誘禁止でいいのではないでしょうか。

希望があれば承るし相談にも乗る、でも金融機関からは一切勧誘しちゃならん。違反したら即免許取上げ(ちょっと過激?)。

これならシンプルで、ゆうちょ銀行の行員でも理解し、実行できるのではないでしょうか。

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