違和感を感じさせる小型Jリートに関する日経の記事

2019年6月28日付の日経新聞にJリートに関する分析記事が掲載されていました。
その記事の趣旨は以下のようなものです。
・時価総額の大きい銘柄が買われる一方で、小型銘柄は割安に放置されている。
| 割安である理由
割安に放置されている要因として以下の理由が挙げられています。
・資金力が乏しい小型Jリートは不動産価格の上昇で物件取得が難しくなっている。物件が増えないと成長が期待できない。
| 利益相反への懸念
さらに投資家からの利益相反に対する不信感もあるとされており、具体的には以下のような懸念が示されています。
・事実上のスポンサーである親会社の不動産会社が所有する物件を高値でJリートに売却しているのではないか。
・Jリートの保有ビルにスポンサーの親密企業を安い賃料で入居させているのではないか。
・スポンサー系の管理会社を雇い、高い手数料を払っているのではないか。
| Jリートの運用形態の問題点
日本とアメリカのリートの運用形態の違いから以下のような指摘がなされています。
・日本がJリートの仕組みを導入するにあたり参考としたアメリカでは「内部運用型」の仕組みをとっている。リート自らが従業員を抱え、物件の売買や管理を行う。運用者は独立した判断でリートの価値最大化を目指す。
・一方、日本は「外部運用型」の形態をとっており、物件の売買や管理は外部の運用会社が行う。これは、日本ではリートの設立の目的が不動産会社による物件の売却先の確保という出口戦略にリートが活用されたからである。
| 個人的感想
上記の日経新聞の記事はもっともらしい部分もありますが、小型のJリートが割安に放置されているという視点からしてどうもおかしいと感じざるを得ません。
少々以前のものですが、時価総額と利回りの関係を調べたのがこちらの記事です。
じり高を続けるJリート、小型リートは?
大型はもちろん買われていますが、小型も買われています。小生のJリートのポートフォリオは小型ばかりですが、最近、評価益を大きく伸ばしています。
不動産物件が割高になっている中で資金力がないから買えないって、否定的に捉えてますが、そもそも高値で買ったらいかんだろって突っ込みを入れたくなります。
Jリートに「成長」という概念もしっくり来ません。魅力的なサービスや商品を提供して売上げを伸ばしていくといった事業モデルとは少々趣きが違いますし、規模の拡大という概念のほうがしっくりきます。もちろん、入居者の維持や募集のために物件のメンテナンスやリノベーションが必要であることは承知しておりますが。
どうも日経の記事は腑に落ちません。
また、利益相反の懸念については、小型Jリートに限ったものではないはずです。大型はモラルが高く、小型はモラルが低いとでもいいたいのでしょうか。これまた大いに疑問です。
唯一納得させられたのは、運用形態に関する考察です。
邪推ですが、日本でJリートが導入されたのはバブル崩壊で不動産会社が抱えきれなくなった物件や銀行が抱える不良債権の担保物件の受け皿が欲しかったためだと思います。
そのためには、リート自身の独立性が邪魔になるのです。親のいうとおり、親がいらなくなった物件を子に売ってしまう、そんな構図だったのだろうと推測します。
ある種、投資家は利用されたのです。
幸い、現状、不動産市況も立ち直りを見せ、また十分ではないのでしょうが、ガバナンスは強化されてきています。
しかし、今後また、市況が悪化すれば利益相反の問題が浮き彫りになってくるかもしれません。上記のような問題点をはらみつつJリートが運営されていることは頭の片隅に置いておく必要がありそうです。
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