かんぽ生命おまえもか、モラル欠如の保険不適切販売

ハンマー



先日、ゆうちょ銀行による高齢者への投資信託の不適切販売が明らかになったばかりだというのに、今度はかんぽ生命がやらかしてくれました。

ゆうちょ銀行もかんぽ生命も日本郵政の子会社です。いったい日本郵政のガバナンスはどうなっているんだろうと首を傾げたくなります。



不適切な乗換募集により顧客を無保険状態へ


既に保険を契約している顧客に対し、新しい保険を販売するために現在の保険を解約してもらって、新契約を申込みしたところ、健康状態の変化などにより結果的に新契約の締結を断られ、無保険状態に陥った事例が2万件近くにおよぶとのことです。

顧客にとっては大迷惑な話で、かんぽ生命にはしごを外されたようなものです。そのまま放っておいてくれれば保障が継続していたのに、その保障すら無くなってしまったのですから。

保険業法では契約を乗換える際には顧客に不利益となる事項についての説明義務があります。既契約を解約して新たに保険の申込みをする場合には新契約が成立しない可能性があることは当然に説明しておかねばなりません。しかし、今回の乗換え勧誘時にその義務が果たされていたかは大いに疑問です。

厚かましいのは6月27日に、かんぽ生命は上記事案について募集手続き自体に問題はなく不適切販売にあたらないという考えを示したことです。

もっとも、上記事案の発生には構造的な要因があり、現場の職員はある種被害者であるともいえます。

理由は以下の2点です。

・かんぽ生命は保険金の上限が2,000万円と決まっており、旧契約を解約してから新契約の申込みをしないと上限を超えてしまうことがあること

・多くの保険会社では新商品が販売された場合、既存の契約を新契約に切り換える、転換という仕組みがあるが、かんぽ生命にはない。


上記のように新契約を締結するには旧契約を解約するしかないという構造的要因が今回の無保険問題の原因であると考えられます。

保険料の二重取りで手当てをゲット


これは、上記の無保険問題とはまったくの逆パターンと捉えられます。

新たに保険に入ってもらい、古い保険は無用になったにもかかわらず、それを解約せずに放置し、保険料を二重に徴収していたというのです。

解約せずに旧契約を引き延ばせば職員は手当てを多くもらえるので意図的に行っていたのではという疑いが持たれています。

その数、実に2万件以上。他の保険会社からも同業者として見識を疑う声が上がっており、かんぽ生命のモラル欠如は他の保険会社よりも相当ひどいと思わざるを得ません。

7月10日、かんぽ生命は一転して不適切販売の存在を認め、謝罪してします。

かんぽ生命商品の販売体制


かんぽ生命は、その商品販売を同じく日本郵政の子会社である日本郵便に委託しており、実際に保険商品を売っていたのは郵便局の局員です。

日本郵便はかんぽ生命から販売手数料をもらって収益としているわけです。そして郵便局の局員には過大なるノルマが課されていたというのです。

郵便局の局員は、ゆうちょ銀行の貯金を集めたり、郵便事業を行ったり、投資信託を販売したりとやることが多大になっている中でさらに保険も販売しなければならず、知識も中途半端になりがちだという問題も抱えています。

不祥事の原因と経営責任


このたびの一連の不祥事は複数の原因により引き起こされていると見ます。そしてその責任は以下のように整理できると思います。

・商品や販売手法が時代にマッチしていないにもかかわらず放っておいたかんぽ生命の経営責任

・郵便局員のモラル低下とそれを放置した日本郵便およびかんぽ生命の経営責任

・郵便局員に研修不足の中で、過剰なノルマを課した日本郵便の経営責任


処分の可能性と日本郵政株の売出しへの影響


これだけ大掛かりな不正事案が発生したとなれば当然、金融庁による業務改善命令(場合によっては業務停止)が出るのが普通でしょう。

ところで、政府は今秋、日本郵政株の追加売出しを控えているのです。業務改善命令などが出ればその改善状況が確認できるまで売出しを延期するのが妥当でしょう。

売出しをしたいがために、行政処分が行われないようなことがあれば、今度は政府の不正が疑われることになります。

親方日の丸、長らく続いた悪しき慣習から脱却するのは容易ではなさそうです。

【関連記事】 ゆうちょ銀行の投信不適切販売と無茶苦茶な高齢者勧誘ルール

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