働き方改革で日本経済に変調が現れている

労働



働き方改革が世に浸透してから、日本経済の様相が以前とは大きく変化しつつあります。さて、その変化は吉と出るのか、凶とでるのか?



2019年4~6月期GDPの動向


2019年4月~6月期のGDPの結果予想がかなりの弱気となっています。民間各社の予想では前年同期比、年率換算で0.3%の成長見込みです。

大型連休で個人消費は好調だったもものの、海外経済の低調から引き続き輸出が不調です。そのため、1月~3月期の2.2%増からは大きく減速しそうな気配です。もっとも、1月~3月も異様な特殊要因によるものであり、実質的には低調が継続しているといえると思います。
(参考記事) 実質GDPが年率2.2%増に上方修正(GDPのトリック)

消費増税後の10月以降の予想はさらに酷く、マイナス成長が予測されています。

人手不足が企業に与えている影響


GDP低成長にあっても、深刻な人手不足は継続しています。2018年の有効求人倍率はなんと45年ぶりの高水準。45年前といったら1973年(昭和48年)。石油ショック前の高度成長時代最終章といったところです。また失業率も2.5%以下とこれまた26年ぶりの低水準となっています。

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(出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構)

これだけ人手不足であれば時間外労働が増加し、賃金が上昇すると思えばさにあらず。

実質的に働き方改革が浸透しだした2016年あたりから、景気が良くても労働時間が増えないという現象が見られるようになりました。そのため、仕事があるのに人手不足で裁ききれないといった状況が発生しており、機会損失が発生しています。なんと人手不足による倒産まで起きている状態です。

残業が減るから、月収が減る。これは当然のことです。しかし、労働生産性が向上していれば、賞与として還元されるのが一般的でしょう。しかし、実際には2019年夏のボーナスは6割以上の業種で減額されてしまいました。

人手不足によって、需要があるのに供給が追いつかず、業績が伸びないという構図が浮かび上がります。企業は、省力化投資に力を入れ始めており、その恩恵を被って機械産業は賞与を増額させていますが、全体としてはまだ緒についたばかりというところです。

仕事はあっても収入が伸びない・・・


収入が伸びないことを印象付けるのが、100円ショップの好調さです。新規出店が相次いでおり、また大手100円ショップでは既存店売り上げも4年連続の増加とデフレを追い風に好調を保っています。

100円ショップで節約したお金が他の消費に回れば、日本経済は成長軌道に乗るのですが、その分が貯蓄に回っていると考えられ、消費拡大に結びついていません。

このような状況ですから政府による大幅な財政支出が必要な場面だと思うのですが、実際には増税と緊縮財政路線が継続されており、デフレから脱却できません。

まとめ


日本経済は今、剣が峰に立たされていると感じます。「人手不足」「労働時間の短縮」という矛盾の中で成長するには、創意工夫による労働生産性向上が欠かせません。

その創意工夫ができなければ、需要があるのに供給できない、よって収入がアップしないという縮小均衡デフレ路線から脱皮できません。

これからの数年が今後20年の日本経済の方向性を決めていくと思います。

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