スズキ、株価下落。スズキを取り巻く六重苦

地球



スズキ(7269)の株価が軟調です・・・。もっとも、自動車株は総じて売られており、スズキに限ったことではないのですが。スズキの主力市場であるインドの市場環境悪化が著しく、他のメーカーが直面している課題にさらに上乗せされる形となっています。



その1:日米貿易交渉(各社共通)


G20が終わり、日米貿易交渉が再開される予定です。大統領選を控え、トランプ大統領は外交交渉で得点を稼ぎたい構えです。

当然、日本の対米貿易黒字もそのターゲットであり、そのメインディッシュは日本の主力産業である自動車産業に向けられるのは間違いありません。

関税上乗せ、あるいは数量規制などにより日本の自動車メーカーにとって不利な条件で交渉が進む可能性が十分あります。

その2:円高圧力(各社共通)


アメリカ、FRB銀行は約10年ぶりに金利引き下げを決定しました。日本はもはや金利引き下げの余地はほとんどないため、日米の金利差は縮小し、円高圧力が高まります。

FRBの決定を受け、円は106円台まで上昇しています。来年の大統領選を控え、景気をなんとしても維持したいトランプ大統領は、今後もFRBに相当のプレッシャーをかけていくでしょう。

アメリカには金利引き下げ余力がありますが、日本にはないため、円高がさらに進む可能性があります。

その3:インド市場でのローン市場縮小(スズキ特有)


2018年9月、インドの大手ノンバンクが経営破綻し、インドの金融業界に信用不安が広がっています。

金融機関は新たな融資に慎重となっており、消費者はローンを借りにくくなっています。

その4:インド市場での保険料値上げ(スズキ特有)


2018年9月、インド政府は自動車損害賠償保険の加入期間を1年から3年に延ばしました。そのため、消費者の保険料負担は3倍となり、自動車の購入意欲を削ぎました。

さらに2019年6月には保険料が10%以上値上がりしたため、2018年8月以前に比べ、実質3.3倍以上の負担がのしかかっています。

その5:インド市場の環境規制強化(スズキ特有)


インドでは2020年春から新しい排ガス規制が導入されます。規制の内容はヨーロッパの規制に準じた厳しいものです。現時点でその規制に適合した車種は限られており、新たな車種の投入を待っている消費者が新規での購入を控えています。

また、新規制が導入された後は非適合車の販売ができなくなってしまうため、賢明な消費者はその値下げ処分売りを待ち構えており、現状売り上げが伸び悩んでします。

上記3つのインド市場特有の原因により、インドの自動車販売は8か月連続で前年割れの状態です。2019年6月に至っては16%減と相当な落ち込みようです。この1年半でインドの自動車販売店が300店舗弱閉鎖に追い込まれました。

インドは世界的に見ても第4位の巨大市場です。その巨大市場が縮小しているため、世界的にもその影響が波及しています。

その6:不正検査の影響(スズキ特有)


先日発表された不正検査への対応のため、検査を丁寧に行っており、その分生産スピードが落ちています。残業でカバーしている模様ですが、働き方改革の影響もあり、スピード低下に追いつかない状況です。

また、残業増となれば、人件費の問題もありますので、利益の圧縮要因となってしまいます。

(関連記事: スズキ、不正検査で顧客、株主を大いに裏切る

私見


逆風吹きまくりで株価も下落の一途を辿っているスズキですが、個人的には買い場が来ているという印象です。

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もともとスズキはアメリカ市場に依存していませんので、日米貿易交渉の結果にはあまり左右されないはずです。

インド市場の停滞も一過性のものでしょう。インドは経済成長著しく、今後も高成長が望めると思います。当然、自動車への関心やニーズも高まり、販売台数は持ち直していくものと考えます。インド市場全体が停滞しており、スズキ自体のシェアは落ちていませんから、それほど弱気になる必要はないでしょう。

残る懸念は円高です。やはりスズキも円高には弱い。もう一段の円高を想定した投資スタンスが欠かせないと思います。


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