銀行の有価証券運用の限界。その賞味期限が近づきつつある

銀行の本業である融資での利ざや稼ぎはマイナス金利の影響で泣かず飛ばずの状態が続いています。本業での赤字を他の収益源でカバーするという構図ですが、いったいいつまで持続可能なのでしょうか。
| 本業の不振をカバーするのは・・・
本業の収益をカバーしているのはまず有価証券による資金運用でしょう。投資信託や保険の販売手数料、M&Aの仲介なども増えてきてはいますが、とても全従業員を食べさせるような収益の柱にはなっていません。振込手数料などもネット銀行の台頭で値下がり圧力は高まるばかりです。
そして、頼みの綱である有価証券運用収益も先細りとなってきています。
新たに発行される国債は金利ゼロ%。その間に過去に買った国債がどんどん満期を迎えることになります。
本業の赤字を埋めるために過去に買って評価益となっている債券を売ったりしていますが、あと5年程度でそれも不可能になり、利回りが取れる債券が底を尽きそうなのです。
かといって株式で、というわけにはなかなか行きません。なにしろ株は値動きが激しくて、ごく一部の資金しか投下できません。Jリートもまたしかりです。銀行はその特性上、大きなリスクを取ることはできないのです。
| 過去の蓄積、含み益の状況はどうか
2019年3月期の上場地銀の有価証券の含み益は前期に比べ、11%減となった模様です。なかには含み損に転じてしまった銀行もあります。
含み損を抱えてしまうと赤字決算は避けられないでしょう。そうなると自己資本がいつまで持つか、増資ができるのか、信用不安による取り付け騒ぎが起きないのか、といった懸念材料が次々と浮かび上がってきます。
海外の金利も低くなっているし、円高への懸念も高まっています。かといって為替ヘッジをしたら、利回りが取れません。
まさに袋小路に追い詰められつつあるというのが現状ではないでしょうか。そして、経営の屋台骨を支えられるような新機軸もまた見えないのであります。
銀行としてはなんとか異次元金融緩和の終了を待ちたいところですが、世界各国が金利を下げている中で、当面そういった環境は訪れそうにありません。
| そして銀行員の数は減りつつある
全国の銀行員数が2018年度で3,600人ほど減少しました。2005年以降で最大の減少幅であり、リーマンショック時を上回ります。
要因としては新卒の抑制と機械化の進展です。IT技術を利用することで、人手を減らし、より効率的な事務処理を目指しています。
中には2018年度の採用人数が一人だけという銀行もあり、驚きを禁じえません。銀行は風評リスクの影響が大きいため、安易に人員整理などをしづらく、採用抑制による自然減といったところでしょう。
苦境にあえぐ銀行業界。いつ復活の狼煙が上がるのでしょうか。それとももう上がらないのかも・・・
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