MMNの圧力によるMMT(現代貨幣理論)の迷走と混乱

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The Modern Money Network(以下、MMN)という団体がMMT(現代貨幣理論)の代表的提唱者の一人であるステファニー・ケルトン教授が7月に日本へ訪問したことに関して後述のような声明を発表しました。
(MMNという団体の詳細はよくわかりませんが、コロンビア大学に本部をもち、貨幣に関する研究をしたり、支援を行っている団体のようです。)

経済理論であるMMTが政争の具にされて、迷走状態に陥ってまいりました。

迷走の原因は複雑に絡み合っているようで、完全に解きほぐすことは不可能かもしれませんが、ある程度のレベルまではブレークダウンできそうです。



根本的問題


ケルトン教授が前回の大統領選で社会民主主義者を自称し、民主党から立候補したバーニー・サンダース議員の経済アドバイザーをしていたことが表すように、MMTは左派リベラルの特許であるかのような印象です。

そして、なんとアメリカ人の多くは日本の自民党が右翼政党であるかのように思っているようです。(実際のところはかなり左派リベラル色が強くなってきているのにもかかわらず・・・)

自民党の中でもMMTを積極的に支持する西田昌司参議院議員や、安藤裕衆議院議員はまるで極右であるとみなされています。

MMTを支持する人が極右であるとなると、アメリカでの構図と矛盾が生じますので、極右がMMTを支持したと考えられているのでしょう。実際のところ、極右っていうほど右寄りではないと思うのですが・・・。

そして、アメリカでMMTを積極的に提唱、主張しているMMNは右派保守系を嫌悪しているようなのです。

MMTの主張自体に政治色は無いと思われるのに、政治利用されているようです。(唯一、政治色を感じるのはJGP(ジョブ・ギャランティー・プログラム)くらいでしょうか。)

※JGP:政府が最低賃金での雇用を保証し、失業者がなくなるまで政府が責任を持って雇用を確保するという制度)

MMNは2019年9月13日、ケルトン教授の日本訪問に関し、以下のような懸念の声明をフェイスブックに掲載しました。
(誤訳があるかもしれませんが、ご容赦ください。)

ケルトン教授に対する日本への招待(声明内容より)


・4月29日に、京都大学はステファニー・ケルトン教授を講演者として招待した。
・京都大学の藤井教授は、以前は安倍首相の経済顧問であった。
・招待の一環として、ケルトン教授は京都大学での講義に加えて、次のイベントに出席を依頼された。
*左派リベラルの経済学者である松尾匡氏のインタビュー
*衆議院での日本の政治家のためのMMTに関する講義
*日本のメディアの記者会見
*インターネットテレビ番組「三橋TV」のインタビュー
三橋TVは招待状で日本の右翼メディアとして説明されたが、当時のインタビュアーが誰であるかについての情報は提供されなかった。

ケルトン教授の訪日に関する懸念(声明内容より)


・5月19日、ケルトン教授は「来月、日本で安藤議員と西田議員に会えるのを楽しみにしています!」とツイートした。
・当時、ケルトン教授は、消費税増税に反対していたこと以外、両議員について何も知らなかった。
・その後、アメリカの黒人社会主義者は、ケルトン教授へ次の返信をツイートした。
「西田議員はファシストです。 MMTは「中立」かもしれませんが、米国と日本のナショナリスト政治家と会うことの意味は何ですか?西田議員は本当にファシストです。MMTは中立的かもしれませんが、あなたがアメリカや日本の国粋主義者の政治家と面会することの意味は何ですか?」
・その日遅くに、MMNの元メンバーがMMNのリーダーに連絡して、MMNはケルトン教授の訪日に関し懸念を表明した。
・その懸念は、次の2つ。
*ケルトン教授のツイートによれば彼女は日本の極右政治家、西田議員と安藤議員を直接訪問するつもりであるように思えた。
*消費税増税案に反対することで、彼女は「ファシストで満ちた自民党の人気を維持させるために増税延期を推奨した。」と見られるだろう。
・これらの懸念に基づき、MMNはケルトン教授に、西田議員と安藤議員との会議のキャンセルを提案した。またMMNはMMN内の多くのメンバーが懸念を表明したことを示した。
・ケルトンは当初、不満を表明したが、最終的には同意した。

ケルトン教授の訪日(声明内容より)


・7月中旬、ケルトン教授は計画通り日本を訪れた。
・旅程には、次のイベントが含まれていた。
*MMT研究グループとの昼食
*公開講演
*記者会見
*三橋TVのインタビュー
*立命館大学での公開講座
・日本に到着すると、ケルトン教授はMMT研究グループのメンバーとともに昼食をともにした。
・そこでは、藤井教授、安藤議員、西田議員との写真など、多くの写真が撮影された。
・続いてケルトン教授はシンポジウムの一環として基調講演を行った。
・基調講演の後、ケルトン教授は記者会見に出席した。
・翌日、ケルトン教授は、三橋TVのインタビューを受けた。
・その日遅く、ケルトン教授は立命館大学で著名な左派経済学者の松尾匡氏が司会を務めた講演を行った。
・滞在3日目に、ケルトン教授は日本の主要なメディアのインタビューを受けた。

日本訪問後のケルトン教授の対応(声明内容より)


アメリカに戻ると、最初の招待状で提示された内容との多くの矛盾を感じて、ケルトン教授は次の行動をとった。
・12月21日のフォローアップイベントへの招待を拒否。
・三橋TV、クライテリオン、または令和ピボットを含む将来のイベントに参加しないことを決定。
・そして7月21日に松尾匡氏にメールを送った。そこでは立命館大学での講義に対する謝意を示した。反緊縮財政運動の他の進歩主義者と連絡を取り合い、つながりを持ちたいという意欲を示した。

MMTアカデミックによるさらなる対応(声明内容より)


・ケルトン教授から提供された情報に加えて、日本の政治に精通している他の同僚の追加検証に基づいて、MMTアカデミックのビル・ミッチェル氏は、将来このような問題を回避するための方策を作成した。
・招待されたすべてのイベントを公開し、すべての資料を事前に入手可能にする。
・標準的な国際メディアまたは主要な日本のメディアのインタビューのみ受ける。
・招待を受け入れる前にイベントの資金源を確認する。
・可能な限り、招待者から独立した通訳者を利用する。
・三橋氏との交流や関与を避け、安藤議員または西田議員と個人的に会ったり、交流したり、写真を撮ったり、ソーシャルメディアで宣伝したりすることを避ける。
・クライテリオン、経営科学出版、令和ピボットが主催するイベントに参加しない。
・反緊縮を掲げる左翼団体が主催するイベントに積極的に参加し、ソーシャルメディアを介してそれらのイベントを宣伝する。
・さらに、ミッチェル氏はクライテリオンの編集者の藤井氏に手紙を書き、第二次世界大戦中に日本が犯した南京大虐殺やその他の残虐行為についての嫌悪感を示すとともに、虚偽の主張を含むMMTに関する記事を撤回するよう要求した。

感想


左派リベラルの松尾氏には今後とも協力する旨連絡する一方で、右派保守系と見られている面々には今後関わりを持たないとするという単純な構図のように見えます。しかし、MMTアカデミックというのがよくわからない・・・。

それにしてもなんでMMTの話に捏造された南京大虐殺まで登場するのか理解不能です。アメリカのリベラリストにとって、自民党は右翼政党に見えるのでしょう。実際そんなことはないのに・・・。

ケルトン教授を招いた藤井教授らにとってはなんとも裏切られたような心境であると推測します。ケルトン教授も本意ではない圧力によって、やむを得ない対応となったかもしれません。

このような内ゲバで、MMTの主張があたかも偏狭な主義主張であると捉えられてしまうのは悲しいことです。

経済評論家でリフレ派の上念司氏などはMMTは新興宗教であるかと言わんばかりで、まさに鬼の首を取ったかのような発言をしており腹立たしく感じます。

今後、予定されているMMT提唱者の一人、ランダル・レイ教授の来日にも少なからず影響を与えることになるでしょう。本当に来日できるのでしょうか。レイ教授にも少なからず政治的な圧力がかかると思います。

単純な構図ですが闇は深い。とにかくMMTが政争の具とならないことを願うばかりです。

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