SBIが苦境の地方銀行と提携して狙っていることは何か?

銀行が苦境に立たされています。とりわけ厳しいのは地方銀行。その地方銀行に救いの手が差し伸べられるかもしれません。
■ 地方銀行苦難の理由
再編が遅れていたことや地方経済の疲弊がその主な要因です。
バブル崩壊の痛手を都市銀行ほど深く受けなかったため、ドラスティックな再編を迫られることなく、今までやり過ごすことができていましたが、地方経済の衰退が徐々に進み、融資が減少傾向にあるところに、マイナス金利という大波が襲ってきてなかなか去ってくれません。
強烈な再編劇を演じたメガバンクですら、昨今のITやAIの発達により人員削減や店舗の削減を強いられているのですから、地方銀行に迫られる変化はさらに苛烈なものになるはずです。
2018年度、地方銀行の4割が本業の融資業務で赤字に陥っています。そして、他の収益でもそれを補填することができず、最終赤字になる地銀もパラパラと現れてきました。
■ 地方銀行に救世主現る?
そんな地方銀行に救いの手?を差し出してきたのが、SBIホールディングス(8473)。
なんと、SBIHDは全国の地方銀行と資本提携、業務提携を行って第4のメガバンクとなるべく地銀連合構想なるものを始動させたのです。SBIHDはいったい何を狙っているのでしょうか。
島根銀行は2020年3月期、23億円の最終赤字になる見込みであることを発表しました。そして、SBIHDは地銀連合の第一弾として島根銀行に34%の出資比率で出資をするというのです。そして、島根銀行に取締役も送り込むいうことです。
それにしても島根銀行株の時価総額は、なんと約40億円・・・。さみしい限りであり、34%の出資をしてもそれほど多くの金額にはなりません。ちなみにSBIHDの時価総額は6,000億円弱です。
今後、SBIHDや地銀、ベンチャーキャピタルなどが出資する共同持株会社で地銀の株式を保有し、地銀連合を作る。これが第4のメガバンク構想なのでしょう。図にすると以下のようなイメージでしょうか。SBIHDだけではさすがに資本力に限界があるし、リスクも大きいので余力のある地銀やベンチャーキャピタルにも出資を募るということだろうと思います。

■ 金融当局との思惑とも一致
地方銀行の採算悪化とその再編は金融庁にとって大きな悩みの種です。
放置しておけば、いずれ金融危機にも発展しかねません。かといって、銀行とて民間企業。無理やり合併させるわけにもいかず、金融検査で行政指導を行う程度しか行えないのが実態でしょう。
ただ、金融庁も手をこまねいているわけではありません。同一県内の地銀同士の合併に独占禁止法の適用除外を認める法律を整備するなど、再編が進みやすい環境を整えつつあります。
その目的はただ一つ。金融システムの安定を維持することです。今回のSBIHDの案は手法こそ違えど、金融システムの安定を図るという意味では金融庁の思惑とも一致しています。
■ SBIHDの真の狙いは何か?
さて、SBIHDは地銀と連携を深めることで何を狙っているのでしょうか。
SBIHDは傘下に50社以上もの子会社、関連会社を抱える金融コングロマリットです。それらの子会社のサービスを提携地銀を通じて提供することでさらに売上げを伸ばそうと考えているであろうことは容易に想像できます。
例えば、投資信託のラインアップにSBIアセットマネジメントのファンドを加えることで、運用金額や顧客層を増やすことができるでしょう。生命保険や損害保険の窓販などでも提携できるはずです。
あるいは、モーニングスターの投資情報を使ってもらうとか、組み合わせは多種多様。イメージにすれば以下のような感じです。

この流れが本当に機能するかどうかは未知数ですし、機能させるには相当の時間もかかるでしょう。その間に利ざやが好転し、地銀の経営が改善される可能性もあります。
しかし、現在の金融情勢が当面継続する可能性が高く、経営の厳しい地銀にとっては救世主となりうる可能性もあります。今まで数々の提携を成功させてきたSBIHDだけにその成功可能性は十分にあると思います。
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