新機軸を探し始めた銀行業界の苦悩と試行錯誤

金庫



異次元金融緩和が思いのほか長引き、銀行の収益が揺らいできています。この状況が続けば縮小均衡すら難しくなっていきます。銀行業界は生き残りをかけだ打開策の模索に必死です。



銀行業界を取り巻く環境


銀行の本業は融資で金利を稼ぐことです。しかし、超低金利の下、銀行が貸し出す金利はもはや1%割れが常識となっており、利ざやが限りなく縮小しています。

それでも民間企業や個人はなかなかお金を借りてくれません。ここ20年でデフレ慣れしてしまい、お金は借りれば損をするという思考回路が固まってしまいました。お金がモノの価値より相対的に高くなっていく中ではお金を借りれば、実質的に将来の返済負担がより大きくなるからです。

また、お金を借りて儲けられるようなおいしい事業もほとんど見つからなくなってきたという要因もあるでしょう。

それでも銀行も生き残っていかなければいけません。

銀行員は全国で約30万人。信用金庫や農協などを含めれれば、50万人規模の従業員を抱える一大産業です。

もっとも2018年、銀行員の数が4千人弱減少しました。採用抑制による自然減ですが、今後も今の金融環境が続けば、採用抑制だけでは間に合わなくなっていくでしょう。リストラの4文字がちらついてきます。

そんな状況を打破するため、メガバンクを中心に新たなビジネスを立ち上げるための社内起業が推進されつつあります。神風よ吹けって感じです。

みずほFGの取り組み


みずほFGは子会社社員を対象に、既存業務にとどまらない新たなビジネスモデルの提案を募っています。

経営陣のゴーサインが出れば、新部署を作ったり、場合によっては新会社を立ち上げて、新たなビジネスにチャレンジしていくことになります。

新会社を設立すれば当然、行員もその会社に行くことになるのでしょう。

銀行業界の苦悩に配慮したのかどうか知りませんが、2016年の改正銀行法により、銀行は他の会社の株式を5%を超えても保有できるようになりました。

金融と非金融との垣根は徐々に下がり、もはや容易に乗り越えられるものとなりました。そして、銀行業は着実にIT産業にお株を奪われつつあります。

三菱UFJ銀行の取り組み


三菱UFJ銀行では行員が週1日から2日、外部の企業で働ける新人事制度をスタートさせました。その目的は、表面的には外部企業への財務的助言をし、連携を深めるなどとされております。

しかし、個人的な憶測ですが、そのまま出向そして転籍への道筋をつけ、行員数の削減を図るといった狙いがあるのではと思います。

なんだかひも付き融資といった印象です。

三井住友FGの取り組み


三井住友FGでは顧客の預金残高やクレジットカードの利用状況を活用したマーケティングなどの新ビジネスの開発に力を入れているようです。

お金を預かるバンクからデータバンクへの移行といったところでしょうか。

過去の購買履歴などは今後の消費動向を推測するのに格好のデータです。金融機関にはそのようなデータがたくさん眠っているのです。

それを眠らせておくのはもったいないということなのでしょう。犬も歩けば棒に当たる的な闇雲で非効率な営業から、ターゲットの絞込みを助けてビジネスにつなげていくというわけです。

それにはITやAIの活用は必須条件でしょう。文系銀行員にそんな大それたことはできません。今後は理系の銀行員が増えていくのは間違いありません。

所感


各社各様にさまざまな戦略で、厳しい金融環境を乗り越えようという姿が見て取れます。

個人的にはみずほFGの取り組みが一番夢を感じます。何が生まれるかわからないところが面白い。

三菱UFJ銀行のやり方はちょっと・・・。取引先に行員をねじ込むかのようで、世知辛いというか、生々しいというか・・・。

三井住友FGは三井住友VISAカードという強力なクレジットカードを持っていますので、そのデータを生かそうという感じでしょうか。でもクレジットカード会社は山のようにあるし、データバンクとしては物足りない感じもします。

データバンクではやはりGAFAに代表されるようなIT企業にはかなわないでしょう。

こじんまりとした新ビジネスにとどまる可能性が高いと思います。

誤解を恐れずにレッテル貼りすれば、みずほFGは金融総合商社を目指し、三菱UFJは金融人材派遣業を目指し、三井住友FGは金融IT産業を目指すといったところでしょうか・・・。

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