国家的かつ破滅的な「自己実現的予言」

自己実現的予言。あまり馴染みのない言葉かもしれません。しかし、それは本当に恐ろしい予言なのです。
■ 自己実現的予言とは・・・
あまり好ましくない歴史の事例なのですが、過去の黒人差別が典型例です。
「黒人は知能が低いから教育を受けさせても意味はない。」
という意見(偏見)があった場合(実際はそんなことがないことは皆さんご存知のとおりです)に、その考え方に基づき、黒人に本当に教育サービスが提供されなくなると、潜在能力はあっても教育が受けられないので、知識や教養レベルが上がりません。
結果的に本当に知能が低いということになってしまうのです。そしてそれは確信に変わっていくのです。最初に偏見があり、偏見に基づく行動がなされると、その偏見が実現化してしまうという悲しく、皮肉な現象です。
さて、この自己実現的予言。決して対岸の火事ではありません。日本で、今まさに起こっているのです。
■ 日本で起こっている自己実現的予言
日本でも現在進行形で自己実現的予言が実現しているのです。それは以下のような予言なのです。
「日本は少子化で人口が減少しているから需要が縮小するので設備投資しても無駄だ。」
そして・・・
実際に設備投資がなされない
↓
需要が縮小する
↓
労働者の給料が下がり、ゆとりがなくなって結婚ができない
↓
結婚できないから子どもが生まれない
↓
需要が縮小する
↓
労働者の給料が下がり、ゆとりがなくなって結婚ができない
↓
結婚できないから子どもが生まれない
この流れがスパイラル的に展開して、少子化がますます進んでいくのです。
■ 出生人数が過去最低に
2019年、日本の出生数が90万人を割ると予想されています。2016年の100万人割れからわずか3年で1割減少という急ピッチの減少率です。
2005年に出生率が1.26と最低をつけて、2015年には1.5近くまで戻しつつあったのに2016年から再び下落に転じました。明らかにデフレによる実質賃金の減少が晩婚化、非婚化を加速させています。
今、少子化という自己実現的予言の魔力がますます強力になっています。
■ 有効な少子化対策はなにか
意外に思われるかもしれませんが、結婚している夫婦が生む子どもの数は2005年あたりを底に少しではありますが増加傾向にあります。
それでも少子化が止まらないのは結婚をする人が減っているからなのです。少子化問題は非婚化問題と置き換えられるのです。そして、非婚化問題は所得の減少問題に行き着くのです。
なぜ所得が減少しているのかといえば非正規雇用が増加したからなのです。実際、正規雇用者と非正規雇用者の婚姻率には大幅な差が見られます。
そりゃ、そうでしょう。非正規雇用は一般的に給料は安く、雇用も安定しないので、安心して結婚できないのです。
日本を少子化問題から解き放つには非正規雇用から正規雇用への流れを作っていくことが重要であることは間違いありません。
(参考)

(出所:社会実情データ図録)
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