日本企業が株主重視経営へ傾斜していったその道のり

取引所



戦後の日本的経営の特長といえば、「労使協調」、「家族的な社員同士のつながり」、「終身雇用を前提とした労働慣行」といったところでしょうか。

戦後の焼け野原から復興して、高度成長時代に入り経済成長が、慢性的な人手不足を生み出しました。労働者の雇用を大事にしながら長く、同じ会社で働いてもらうことが日本の企業にとって非常に有益であったのだろうと思います。

ところが、バブル崩壊後によって、日本的経営はまるで悪の権化かのように見捨てられていきます。デフレにより労働者は過剰となり、まるで椅子取りゲームか、押しくら饅頭かのように雇用の安定は揺らいでいったのであります。

すべては会社が生き残るため。

そのためにそれまでのさまざまな労働システムが打ち壊されていくことになったのです。安い株価により、外国人株主の数も増え、「株主重視」の経営に傾斜していきます。

その例をいくつかピックアップしてみます。



派遣労働の解禁そして拡大


1999年、労働者派遣事業が製造業を除き原則自由化されました。自由化により人件費の変動費化などというもっともらしいスローガンで派遣社員は人手が足りなければ雇われ、余ればクビ。

働きが悪ければ契約解除と派遣先企業はやりたい放題をし、労働者の生活は不安定化しました。就職氷河期で、やむなく派遣労働をせざるを得なかった人も多いことでしょう。

2004年には製造業でも派遣労働が解禁されました。人材派遣は企業の利益のための調整弁として大いに利用されてしまいました。そして使い捨て。

個人的意見(偏見)ですが、人材派遣は現代版人身売買だと思います。下のグラフは非正規雇用の推移を表しています。

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(出所:社会実情データ図録)

ここ数年は人手不足から正社員への登用が進んでおり、上昇に歯止めがかかりつつありますが、1990年に比べ、男性は3倍近くに増えています。女性はもとも非正規雇用が多かったという面もありますが、1.5倍程度に増加しています。

そして下のグラフは婚姻率と離婚率の長期推移です。

20191017konnin.jpg
(出所:社会実情データ図録)

1970年代に少子化が加速し始め、いったん2000年頃に下げ止まったと思いきや、再び下落傾向にあります。

両者には大きな相関があるというのが個人的見解です。

男性が非正規雇用となると賃金も限られますし、雇用も安定しません。必然的に結婚は高嶺の花となるわけです。結婚はもはやぜいたく品だという人さえいます。そして少子化が進展するという構図なのです。

ストック・オプションの導入


1997年に商法が改正され、ストック・オプションが導入されることとなりました。株が上がっても、予め決められた価格で株を買う権利を役員や社員にばら撒いて、労働意欲を高めようってわけです。

株価を上げるにはどうしたら?

長期的な視点になど立たず、コスト削減、人員整理、研究開発費の削減などで目先の利益を追求します。ただただ株価を上げることが経営の目的となってきます。

まさに株主(自社の役職員を含む)のための経営に邁進するわけです。

いまや上場企業の4割ほどがストック・オプションを導入しており、株価上昇が経営のインセンティブとなっています。

自社株買いの規制緩和


2001年には自社株買いについて、その目的を限定せず、自由に自社の株式を取得できるようになりました。さらに2003年には、取締役会の決議だけでいつでも自社株買いを行えるよう法律が改正されました。

自社株買いの目的は・・・。

株主への還元です。内部留保を吐き出して、自社株買いをし、発行済株式数を減少させれば、1株あたりの純利益が増え、PERが下がるため、株価の上昇要因になります。資産を有効活用していないと株主から自社株買いをして株価を上げるようなプレッシャーがかかるのです。

そして、事実、自社株買いを発表した企業の株価は上がることが多いという印象です。

まとめ


バブル崩壊後、株価の上昇を目指した株主重視経営に傾斜していったわけですが、その一方で犠牲となったのは労働者です。

一生懸命働いても、その利益は株主に、まるで寄生虫のように吸い取られていく仕組みが見事に構築されていきました。

お手本はアメリカ。

そのアメリカでも行き過ぎた株主重視経営の流れに歯止めがかかりつつあるようですが、日本は周回遅れのトップランナーのように、いまだ全力疾走で株主至上主義を貫く覚悟のようです。

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