銀行、証券が足を引っ張り大卒の内定者数が9年ぶりに減少

日本経済新聞が調べた2020年度の採用状況調査によれば、主要企業の大卒採用内定者数が9年ぶりに前年実績を下回ったということです(0.5%減)。
日本経済にも暗雲が立ち込めてきたのでしょうか。
■ 内定者減少の要因は金融業
しかし、その内情を見てみると足を引っ張っているのは銀行と証券なのです。銀行は11%減少、証券会社にいたっては26%もの大幅減少です。
個別企業に目を向けると三菱UFJ銀行は44%減と大幅減。みずほグループは21%減となっています。野村証券も44%減と大幅減、大和証券グループは29%減となっています。
銀行はマイナス金利による利ざや縮小と貸出の伸び低下、証券会社は投資信託の販売手数料の減少が主な要因です。要は稼げなくなっているので人が採用できないということです。
これらの要因は短期的要因や周期的変動要因ではなく、むしろ構造的な要因であるため、容易に解消されるとはとても思えません。銀行、証券はよほどの特徴的な企業を除き縮小均衡路線を歩まざるを得ないという印象です。
企業は採用数を絞るし、学生からの人気も無くなってきています。業界全体としても今後、再編の第二幕が開かれることになるでしょう。
■ その他の業種はどうか?
金融業界の内定者数減少は別格として、その他の業種でも若干のまだら模様はあります。
自動車産業が5%減、機械は3%減と若干の減少となっています。米中貿易戦争による世界経済の低迷から、輸出に依存しがちな産業の減少が目立ちます。
また、自動車はEV化により、新規参入なども想定され、白物家電同様、コモディティ化する可能性もあるし、カーシェアリングなどの進展により、保有する人が少なくなる可能性もあります。将来の業界秩序を見通すことは大変難しくなりました。
一方で好調なのは、小売や通信。小売業ではドラッグストアなどの好調な専門店が採用を増やしています。通信はやはり成長産業。5G向けの技術者確保、そしてさらには6Gにも対応していかなければなりませんから若くて優秀な人を積極的に採用しているものと考えられます。
■ 内定者数の年次別推移
以下は1996年からの大卒者の内定率の推移です。

(出所:社会実情データ図録)
それにしてもリーマンショック後の落ち込みはすごい。1997年(デフレ元年)以降の落ち込みも目立ちます。
ここ数年はかなり改善されてきていますが、これは団塊世代の大量リタイアによる人手不足の影響が大きく、必ずしもアベノミクスの影響ではないことに注意が必要です。
また、移民政策が今後どのように運営されていくかによって、若年層の労働条件は大きく左右されるでしょう。
■ イギリスに学ぶ
例えばイギリスでは2008年から大量に移民が流入し、イギリス人の実質賃金は8%減少しました。
当然、失業も増え(特に若年層)、人々に鬱積が貯まり、ついにはEU離脱というところまで行ってしまいました。
日本も改正移民法の運用によって、大量に移民を受け入れることになってしまえば、せっかくの失業率の低下も一時的なことになりかねません。
人手不足を労働生産性の向上に結びつけ、賃金向上へと発展させる流れを作らないといつまで経ってもデフレから抜け出せないし、少子化も止められません。
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