ネット生保がネット証券のように爆発的普及をしないわけ

ネット生保の草分け的存在といえば「ライフネット生命」でしょう。業界秩序を揺るがす付加保険料の公表など、さまざまな話題を提供してきました。
しかし、当初の期待ほどの成長は見られず・・・。
私、ライフネット生命保険の株を一時期保有していましたが、結局損切りするはめとなりました。テンバガー候補として期待していたのですが・・・。契約件数は創業10年以上経過したにもかかわらず30万件程度と期待を大きく裏切っています。
生命保険文化センターの調査によれば、ネット生保のシェアはわずか3%ちょっと。個人の株式取引の8割以上がネットに取って代わられたのと比べるとお寒い限りです。
ところで、なぜネット生保は魅力に欠けるのでしょうか。理由はいくつか考えられます。
楽しみを提供するサービスではないから
株や投資信託に投資するというのは、不安もありますが、儲かるという楽しみもあります。
一方で保険は、ある種万が一の不幸に備えるものであり、活用されるときはあまり楽しい時ではありません。だから営業のおばちゃんなりに背中を押されないと自分から入ろうという気にもなりません。
株で儲かったという話を友達から聞くことはあっても生命保険で助かったという話はそうそう聞けるものではないでしょう。
迅速性を求めないから
株価は時々刻々と変化し、時に暴騰することもあれば、暴落することもあります。そのタイミングはいつ訪れるかわかりません。
いつでもタイミングよく取引するためには、ネット証券で口座を開き、ある程度の資金を準備しておかねばなりません。
しかし、生命保険は基本、相場で動くということはありません。年齢や性別で保険料が決まるだけであり、一分一秒で値が変わるなどということもありません。
よって、ネットで急いで取引しようなどという動機が働きません。
頻繁に利用するサービスではないから
昼間働いている人は銀行に行って振込みをするというのは非常に面倒です。コンビニでさえわずらわしい。
お金おろすだけならとっととできますが、振込みとなると結構時間がかかるので、コンビニATMすら抵抗があるのです。
その点、家のパソコンで振込みができるネット銀行は大変便利です。振込みなどは頻繁に使いますので、ネット銀行の口座があると非常に便利なのです。
一方、保険となるとそんなめったに使うものではありません。10年に一度くらい見直しするくらいでしょうか。
万一のときの強力な味方なのですが、黒子のように目立たないので、ネットで生保サイトを見ることすらまれであるのが一般的ではないでしょうか。
コストが不透明で価格の比較が難しいから
生保はそのコスト構造がわかりにくい。そして、ブラックボックスです。
自分が払っている保険料のうち、どれだけが純粋に保険のために積み立てられているのか、経費としていくら差し引かれているのかは原則不明です。よって、単純な価格比較ができにくい。
ましてや、会社によってさまざまな特約があったりして、同じ土俵に乗せられないから比較すらできないというのが実情です。
その点、ネット証券の売買手数料やネット銀行の振込手数料などは外枠で目に見えるので単純比較がしやすいのです。
価格比較がしにくいということは対面販売とネット販売の有利不利の比較も難しい。よってネットだと安いということがわかりにくいのです。
生保のおばちゃんが強力だから
これは偏見じみていますが、いまだ生保のおばちゃんの営業力はすごい。その図々しさと商魂は並たいていのものではないでしょう。
竹やりですが、すごく強力な竹やりであり、ネット隆盛の世の中にあっても竹やりにかなわないという可能性があります。
まだまだ歴史が浅いから
ネット証券が世に生まれたのは1990年代の終わり頃でしょうか。その歴史は早20年にもなろうとしています。
一方、ネット生保を見渡せば、ライフネット生命が業務開始したのが2008年と、まだ10年あまり。歴史におよそ10年の差があります。単に歴史が浅いので、加入者も少なく、今後10年で違った光景が現れる可能性はあります。
そもそも保険加入する余裕がないから
平成時代はひたすらデフレの時代。若い世代はコストに対し非常に厳しい。無駄なものにはお金は出さないし、また出せないという人も多いでしょう。
スマホ代は高いし、給料は増えないし・・・。
保険などに入る余裕などないという人も多いだろうことは容易に想像できます。ネットで生保に入る人は若い人が多いと思いますが、コスト意識の高さと余裕のなさから、保険加入には慎重である人が多いと思います。
若い人にとって生保の存在感が無くなってきているから
個人情報保護法などがない時代、生保のおばちゃんは会社のオフィス内にどかどかと足を踏み入れ、一人ひとりに話しかけていたものです。新入社員などひとたまりもない。
「社会人になったんだから保険に入ってなきゃだめよ。」の説教じみたセールスに圧倒されてKO負け。有無を言う間もなく契約させられた人も多いのではないでしょうか。私もその一人です。
しかし、個人情報保護法やら情報セキュリティやらめんどくさい法律や慣行が浸透するにつけ、生保のおばちゃんどもは、オフィスから締め出されてしまいました。
強引なセールスから解き放たれたのはメリットではありますが、生保という存在を知るチャンスを失ったというのは負の側面です。
本当は保険に入ったほうが良いような人でも、そもそも生保とはなにかを知ることもなく、我関せずになってしまっている人も多いと思います。
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