ネット証券の株式売買手数料はゼロが当たり前の時代に突入

最近めっきり聞くことのなくなった価格破壊という言葉ですが、価格破壊もついにここまできたかという感じなのがネット証券の手数料です。
アメリカでのお話ではありますが、日本にも広がりつつあり、同じ道を辿っていくことは間違いありません。
アメリカのネット証券事情
アメリカのネット証券最大手、チャールズ・シュワブが株式などの売買手数料の無料化を発表後、その他のネット証券も負けじと無料化を発表して追随しています。
インターネットの普及にともなって出現したネット証券による売買手数料の激安化という第一の波から、今度はスマホの爆発的普及によるスマホ証券の台頭が第二の波を生んでいます。
ネット証券は追う立場から追われる立場に立ち位置が変わってしまいました。
しかし、手数料が主たる収益源のネット証券がその手数料をゼロにしたら、いったいどうやって会社を経営していくのでしょうか。
売買手数料以外の収益源(その1)
いったい売買手数料以外の収益源は何なのでしょうか。
まずは信用取引によって貸したお金の金利収入です。お金を借りて株を買う人から金利を取っているので、それで稼ぐということです。
お客さんが信用取引で買った株を保有している間は金利がちゃりんちゃりんと落ちてくる安定的な収益源です。
売買手数料以外の収益源(その2)
販売した投資信託の信託報酬による収益もあります。こちらも信用取引の金利収入同様、安定的な収益となります。
しかし、信託報酬は世界的に低下傾向にあるため、預かり残高を相当多くしないと収益源としては心許ありません。
残高の積み上げによる規模のメリットを追求しないと大きな柱に育てることは難しいでしょう。
その他にもダークプール市場による取引で手数料ゼロでも収益を稼げる仕組みなどもあります。
売買手数料ゼロの収益への影響
アメリカの大手ネット証券の幹部の発言では営業収入で15~16%の減収要因になるということです。
手数料ゼロにしてもその程度しか減収にならないとはむしろ驚きです。これまでの価格競争の中で他の収益の柱を立てて準備していたのだと思います。
それでも影響は小さくはありません。今後は売買手数料の高低から預かり残高の規模へ競争のルールが変わることになりそうです。そして、体力勝負の消耗戦に突入していくことになります。
日本のネット証券事情
日本のネット証券も置かれた状況はほとんど似たようなものです。
松井証券はずいぶん前から、10万円以下の取引ならば手数料はゼロです。しかしながら、やはり全てゼロとなるとやはり収益に与える影響は大きいのが実態。
なかなかゼロへ踏み切れるものではありませんが、放っておけばスマホ証券に顧客を奪われていくのは必至です。もはや時間の問題であり、その時間は短いのです。
今後、日本のネット証券もアメリカ同様、顧客の預かり資産残高の多寡が生き残りのものさしになりそうです。参考までに日本のネット証券の預かり資産残高を調べてみました。(2019年3月末基準)
・SBI証券 約13兆円
・楽天証券 約5.5兆円
・マネックス証券 約4兆円
・松井証券 約2.3兆円
・カブドットコム証券 約2.2兆円
・楽天証券 約5.5兆円
・マネックス証券 約4兆円
・松井証券 約2.3兆円
・カブドットコム証券 約2.2兆円
SBIの強さが際立っています。2番手グループの2倍以上の規模を誇ります。ネット証券のトヨタ自動車って感じです。SBIは顧客基盤の強さから、取りうる戦略も多様であり、他社に対し優位に立っています。
いずれにせよ、スマホ証券の台頭は、ネット証券再編のきっかけとなりそうな気配です。
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