早くもSBIが手数料ゼロ化を宣言。戦々恐々の証券業界

つい最近、アメリカのネット証券が株式の売買委託手数料を無料化していく方向性を示し、日本もやがてそうなると思っていましたが、「やがて」どころか、あっという間に追随の動きが出てきました。
予想どおりのSBIホールディングス(SBI証券の持株会社)です。
2019年上半期の決算説明会の席上で北尾CEOが宣言したそうです。その内容は3か年計画で手数料の完全無料化をめざすということなのです。
証券各社の2019年上半期決算
SBIの宣言とは裏腹に各証券会社の上半期決算はかなり厳しい内容です。
主要19社のうち17社が減益または赤字。
米中貿易戦争で投資家の売買が手控えられ、手数料収入が減少しました。特にその影響を大きく受けたのは、手数料依存度が高い中堅以下の証券会社です。
各社の認識や今後の方針
マネックスグループの松本CEOはSBIの路線とは違い、より付加価値の高い商品・サービスを提供する、具体的にはコンサルティングへの取り組みの必要性を感じているようです。
しかし、高度な情報社会で無料でも相当な情報が得られる中、お金を払ってまで受けたいというコンサルティングというのは本当に限定されるというのが個人的感想です。
いささか的を得ていないと感じざるをえません。
野村ホールディングスは営業体制の再構築を目指すようです。富裕層の顧客には富裕層専門の営業を配置して顧客ニーズに対応していくといいます。
しかし、これもちょっと首を傾げる話。
もっともらしく聞こえますが、意地悪に解釈すれば、取れるところから取る、そして、よりたくさん取れる人材を配置するってことでしょう。ある種、富裕層をカモにするとも思えるような戦略です。
大和証券グループ本社は不動産運用、ネット銀行など証券業以外の新分野の開拓に注力しており、その成果が出始めているようです。
取り組みとしては大和証券が一番真っ当のように思えます。時代の変化に合わせて自らも変化するという姿勢が見えるからです。
実際のところSBI証券は手数料ゼロで大丈夫?
それにしても、実際に手数料をゼロ化したらSBI証券はやっていけるのでしょうか?
2019年3月期の決算で、全体の営業収益から売買委託手数料を差し引いてみたのが下記の表です。

信用取引の金利収入などの割合が大きいのでしょう。手数料部分を差し引いてもなお営業黒字となっています。
投資信託の販売手数料は委託手数料には入っていないと思いますが、既にノーロードの投資信託が多いため、すべて無料にしても結果に大差はないと思われます。SBIに顧客、資金が集まれば、減収を避けられると踏んでいるのでしょう。
しかし、それは他社にとってはつらい話。同じように手数料を無料にしたり、引き下げれば赤字に陥る会社が多いでしょうし、かといって下げなければお客に逃げられる・・・。
まさに前門の虎、後門の狼といったところで、地獄の消耗戦が始まりそうです。
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