強気と弱気が交錯する日本の株式市場の現状

貨幣



アメリカ株に引きづられ日本の株式市場も意外にも?健闘を続けています。日経平均25,000円説や27,000円説など、株式市場が上がり出すとよく出てくるにわか強気説も出てきております。

また、一方では株価天井説もあったりして、今の株式市場は強気派と弱気派が鮮明に分かれているように見えます。さて、どちらの主張が正しいのか?その根拠となっている考え方に迫ってみたいと思います。



日本企業の業績動向


2019年4~9月期における企業業績は純利益ベースで前期比約14%の減益となりました。通期予想では7%程度の減益が予想されており、2期連続の減益となりそうです。

上半期の状況をみると米中貿易戦争の影響により中国の設備投資が減少しており、その影響が日本企業にも現れています。

特に影響が目立つのは製造業で、3割程度の減益。一方で国内を主たる市場とする非製造業は6%程度の増益となりました。

グローバル企業が苦戦を強いられる中、インバウンド消費に支えられ、流通や小売業が堅調です。全体的には減益傾向が続く中にあっても株価は堅調。いったい何が株価を支えているのでしょうか。

(強気説の根拠その1)業績底入説


株価は先を読む。今期が減益はいたしかたないとして、来期は持ち直すのではないかという業績底入れへの期待が株価を支え、また買いの根拠になっているという説です。

業績底入れの前提となるのが為替相場。企業業績の予想為替レートは1ドル108円程度が前提となっていましたが、ここに来て105円程度と厳しめの予想で企業業績を想定する企業が多くなりました。

110円前後の円安が続けば、製造業を中心に業績の上方修正も期待できそうです。

(強気説の根拠その2)外国人投資家強気説


ここ1年、売りが目立っていた外国人投資家の売買動向ですが、最近潮目が変わっており、買い越しに転じています。

アメリカ株を中心に世界的に株高状態になっており、相対的に割安感のある日本株を仕込んでいると考えられます。

(強気説の根拠その3)日銀のETF買い支え説


日銀は債券の買いオペによる金融緩和などの他、ETFを買って市場に資金を供給しています。

今年の買い枠は5兆7千億円。現状、使った枠は4兆円弱程度です。

株が下がり出せば、残りの枠を使って、株価を支え、市場に資金を供給できます。供給余力は2019年内で2兆円程度残されており、買い余力はまだまだ十分という説です。

(強気説の根拠その4)自社株買いによる需給改善説


デフレが継続する中、企業はひたすら内部留保を蓄え、資金力は十分です。新たな投資先が少ない中、自己資本利益率(ROE)改善のための自社株買いを行う企業が増えています。

自社の株価が割安に放置されていると思えば、積極的に自社株買いを行って、少ない資金で発行済株式数を減らすことができます。

(弱気説の根拠その1)米中貿易戦争過激化説


年内にも米中の貿易戦争解消に向けた首脳会談が実現し、追加的関税が解消されていくのではないかという期待が今の株価上昇につながっている面もあります。

しかし、これは両刃の剣。交渉決裂により更なる摩擦の増加となれば、米中共倒れとなる可能性があります。

(弱気説の根拠その2)イギリスのEU離脱混乱説


イギリスでは12月12日に総選挙が行われる予定です。選挙結果により、EUから合意ある離脱ができるのでは、という楽観論が支配的になりつつありますが、どう転ぶかわかりません。

意外な結末となれば市場に混乱をもたらす可能性があります。

(弱気説の根拠その3)消費増税による景気悪化説


今10月に増税された消費税ですが、その影響は今のところ緩やかに見えます。

しかし、ポイント還元などの政策が切れる来年の夏以降が実質的な増税時期ととらえることもでき、そこから急速に景気が冷え込んでしまい株価に悪影響を与える可能性があります。

(弱気説の根拠その4)香港の人権問題深刻化説


香港のデモが収まりを見せません。香港の人々のデモを中国がかなり過激に押さえ込みに走っているようです。

高度情報化時代で、一瞬で情報が世界に広まる現代では天安門事件のようなことになる可能性は相当に低いでしょうが、それに近い抑圧の動きはありえます。

となれば、自由主義を是とするアメリカとの対立は避けられず、米中貿易戦争に悪影響を与えることになるでしょう。

総評


とにかく潜在的なボラティリティは大きくなっていることは間違いありません。上振れするのか、下振れするのか・・・。

予測することは非常に困難ですが、下振れリスクがより大きく、株価下落に備えた投資戦略を取るべき時期だと思います。


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