株式・投信の手数料無料化が一気に加速し、証券業界再編再び

チェス



ネット社会のスピードは本当に早いものです。先日、アメリカでの手数料無料化が報じられたかと思えば、日本でもSBI証券などがこれに追随。そして、ここに来てさらにその流れが加速してきました。



カブドットコム証券の動向


カブコム証券は段階的に手数料を無料化していく方針です。

1.2019年12月中に信用取引での株式売買手数料を無料化
2.2020年初頭に投資信託とETFの手数料を無料化
3.2020年春頃を目処に現物取引の株式売買手数料を大幅引下げ
4.3での顧客増加等の状況を見極めつつ2020年中にも完全無料化

カブコム証券は信用取引の残高にともなう金利収入、投資信託の信託報酬を収益源とするほか、新たに自社で開発する証券システムを外部に販売することで収益を稼ぐというビジネスモデルを考えている模様です。

もともと、カブコム証券の斉藤社長はシステム上がりで証券システムに明るい人なのです。カブコム証券のシステムは当初から自社開発だったはずです。

得意分野で新たな勝負をかけるといったところでしょう。

松井証券の動向


松井証券は2019年12月9日から取り扱う全ての投資信託の手数料を無料化します。

また、カブコム証券同様、2019年12月中にも信用取引での株式売買手数料を無料化する方針です。

松井証券が投資信託の販売を再開したのはごくごく最近であり、もともと収益源としていなかったので、あっさりと無料化することができるのでしょう。

また、信用取引に強いため、その金利収入だけでもかなり安定的な収益を確保できると踏んでの無料化だと推測します。

マネックス証券の動向


マネックス証券は12月中に信用取引の一部で売買手数料を無料化する方向です。一部というのは、ETFとREIT。どうにも腰が引けてる感じです。

投資信託については2020年1月から手数料をゼロにする模様です。

今後のビジネスモデルとして、手数料に依存しないネットによる投資助言サービスなどの強化を打ち出しています。

楽天証券の動向


楽天証券は12月中に投資信託の手数料をゼロにすると発表しました。株式取引についての言及はありません。

他社が次々と無料化を打ち出したので、取り急ぎ投資信託のみで追随したといったところでしょうか。

今後、株式取引についてもなんらかの発表があるのではと予想します。

今後の動向予想


SBI証券はすでに3年後の現物取引手数料無料化を打ち出しています。しかし、他社が思いのほか、早く追随してきましたので、前倒しにすることはまず間違いないでしょう。

マイナーな存在ですが、フィデリティ証券やLINE証券などはすでに手数料は原則として無料です。

今後、その他のGMOクリック証券、岡三オンライン証券などがどんな方針を打ち出してくるか注目です。

対面型の証券会社はどうする?


従来型の対面営業の証券会社はどうするのでしょうか。無論、人手がかかっている以上、無料化の波に乗ることはできません。

野村証券や大和証券など、大手証券会社は収益源が多様化していますので、致命的な痛手を被ることはないと思います。

問題は中堅、中小証券会社です。

依然として、株式や投資信託の売買による手数料への依存度が高いために、顧客がネットに流れてしまうと致命傷になりかねません。

もっとも現時点で、対面証券会社と取引がある顧客はたとえ手数料が無料になってもそちらに流れることはない高齢の富裕層である顧客が多いでしょう。

しかし、高齢であることがネックです。いずれ、取引を止めるときが来ます。そのときに新規の若い顧客は少ないのです。

ネットが浸透しているため、ネット証券に流れる可能性が非常に高いからです。まさに万事休す。

打開策はなかなか見出せそうにありません。

まとめ


ネット証券は無料化というチキンレースを強いられ、収益基盤が揺らぐことは必至でしょう。

アメリカでは、2013年に創業したばかりで手数料無料の証券会社(ロビンフッド社)が600万人を超える顧客を集めているとか。

日本のネット証券もまた再編の波にもまれることになりそうです。

また、対面証券は顧客の高齢化という課題を抱えています。新たな顧客をつかまねばひたすら縮小均衡のスパイラルに陥ることになります。

投資家にとっては?もちろん、手数料が安いことは大歓迎です。

しかし、証券会社の安定的な経営がなされなければ安心して資産を預けておくことができません。そう簡単につぶれてしまったら困ってしまいます。

それにしても証券業界にせよ、銀行業界にせよ、まさに冬の時代が到来しました。証券株、銀行株は当面見送りといったところでしょう。

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