存在感のない公募型投資信託の統合が進みそうな気配

ドミノ



日本には約6,000本もの公募型の投資信託(※)が乱立しています。

時流に乗ったテーマ型の投資信託が雨後の竹の子のように生まれ、そしてやがて廃れたまま放置プレーのような状態になるのです。

要するに売りやすい商品を次から次へと出してきた結果なのです。

(※)銀行や証券会社など金融機関を通じて一般の投資家が購入できる投資信託



日本の投資信託市場の実情


資産残高が1億円~10億円の投資信託が約1,500本もあり、なんと1,000万円未満の投資信託が96本もあるといいます。

1,000万円未満って・・・。もはや1個人の資産レベルであり、そんな投資信託をファンドマネージャーがまともに面倒見るわけありません。

しかし、投資している投資家がいる以上、運用報告書は定期的に作成しなくてはなりません。コストばかりかかり、結局のところそのコストは他の投資信託へ跳ね返ってきます。

投資信託の統合に向けた動き


投資信託は制度上2007年に統合できることにはなりました。しかし、投資家に対していちいち書面で賛否を問う必要があり、手続きが面倒で結局は活用されずじまいとなっていました。

そこで2014年に再び法改正を行い、原則として書面で賛否を問う必要がなくなりました。統合へのハードルが大きく下がることになったのです。

公募投資信託の統合がついに実現


それでも統合は行われませんでしたが、5年経過してようやく第1号となる投資信託の統合が実現する運びとなりました。

野村アセットマネジメントが運用する投資信託2本が1つに統合されることになったのです。

一方の投資信託の資産残高は45億円、かたやもう一方はなんと3,100万円。もはや放置プレイの投資信託であったろうと推測します。

このように放置プレイとなっている投資信託を業界では「ゾンビ投信」などと呼んでいるようです。

統合しても45億円ちょっとであり、日本の投資信託の1本あたりの資産残高平均110億円を大きく下回りますので、試しにやってみたといったところでしょうか。

ドミノ倒しの追随も


今回の統合が呼び水となり、他の運用会社でも統合を検討する会社が現れてきています。

一番乗りになる勇気はなかった運用会社も、野村アセットが先鞭をつけてくれたことから、右に倣えとドミノ倒し的に追随する動きが出てきそうです。

投資家にとっては、ゾンビ投信は金食い虫であるからして、とっとと整理して、他の投資信託の信託報酬を下げていただきたいところです。

参考データ


* 投資信託の純資産総額の推移

以下は日本の投資信託の純資産額の推移を示しています。

20191205tousin1.jpg

2013年から大きく残高が伸びてきていますが、赤色部分の公募型株式投信についてはアベノミミクスの影響による円安と株高の影響だと思います。

黄色部分の私募型(※)株式投信の伸びは、日銀の異次元金融緩和によるマイナス金利により運用難に陥った金融機関の資金が流れ込んだものだと推測します。

(※)50名未満の人に勧誘する、あるいは適格機関投資家と呼ばれる金融機関など専門的知識を持つ投資家を対象としたファンド

* 毎月決算型ファンドの状況

以下は毎月決算型(≒毎月分配型)ファンドの純資産残高の推移と全ファンドに占める比率を示しています。

20191205tousin2.jpg

世界的な金利低下によって、高い分配金を支払い続けることが困難になり、分配金を減らしたことから人気が低下したことがよくわかります。

また、金融庁から悪者扱いされたことから、金融機関が販売に二の足を踏んだという要因もあるでしょう。

* 投資信託が個人金融資産に占める割合

以下は日米欧の個人金融資産に占める金融商品の比率を示しています。

20191205tousin3.jpg

投資信託の比率はアメリカで12%、ヨーロッパでは8.8%となっているのに対し、日本は3.8%とかなり低い水準です。

過去の悪行による結果なのか、それとも単なる発展途上であるのかは意見が分かれるところでしょう。

どちらにせよ、日本も米欧に近づいていくことは間違いないはずです。

(データ出所:投資信託協会)

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