小口投資家なら松井証券で12月23日から現物株手数料も無料!

いやはや驚きました。松井証券(8628)が2019年12月23日から、1日50万円までの株式売買委託手数料を無料にするというのですから。現物株も含めてです。
松井証券の施策
今までも1日10万円までは無料でしたが、10万円で1単元株(※)を買える銘柄は上場株式の約4割程度と中途半端。
これが、50万円になると一気に9割以上に跳ね上がります。よほどの値嵩株でない限り、1単元であれば、手数料は無料ってわけです。
ネット証券なら手数料なんてどこも安いし、似たり寄ったりだろうと考える私でも、無料となると「おおっ!」とその魅力に惹かれるものがあります。
(※)株主総会での議決権行使や株式売買に必要な一定数の量の株式数をいう。
大手ネット証券が示してきた方向感
これまで、大手ネット証券が示してきた方向性を大きくまとめると以下となります。
・投資信託の買付手数料無料化(2019年内にも実施)
・信用取引の売買手数料を無料化(早い会社は2019年内にも実施)
・現物取引の売買手数料を無料化(auカブコム証券が様子を見ながら2020年中にも実施予定。SBI証券は3年以内にすべて無料化の方針)
・信用取引の売買手数料を無料化(早い会社は2019年内にも実施)
・現物取引の売買手数料を無料化(auカブコム証券が様子を見ながら2020年中にも実施予定。SBI証券は3年以内にすべて無料化の方針)
とこんな感じです。
各社ともに現物株の手数料無料化には慎重に対応しているといった印象でした。
現物株取引手数料無料化へのためらい
なにしろ現物株取引は信用取引や投資信託と違って、手数料を取れるのは売買したときのみですから。売買手数料を無料にしたら、まったくの不採算事業になるのは小学生でもわかります。
それを一部値嵩株や大口投資家の取引、売買頻度の多い投資家以外の現物株取引が無料で行えるのです。
各社がこれ以上のサービスで追随していくことは間違いないでしょう。そうしなければ、松井証券に顧客がどんどん奪われてしまうでしょうから。
松井証券からすれば、新興のスマホ証券の台頭に危機感があったのでしょう。それをつぶしにかかったといってもよさそうです。
SBIネオモバイル証券の魅力もTポイントで投資ができることだけになってしまいます。
フィデリティ証券の動きなどからも今後、株式の売買手数料はすべて無料になっていくことはほぼ間違いないでしょう。
会社経営として成り立つのか?
しかし、それでいったい証券会社はやっていけるのでしょうか?
ネット証券の収益源をざっくりと捉えると、「株式の売買手数料」「信用取引の金利収入」「投資信託の販売手数料(もはや実質無し)」「投資信託の信託報酬の一部のキックバック」「ネットFX」といったところでしょう。
このうち、一本の大きな柱が失われようとしています。
また、投資信託の信託報酬の率も年々下がってきており、残高を大きくしなければ、同じ報酬を得ることはできません。
2019年3月期における松井証券の決算を見てみますと、
*営業収益 273億円
うち
・受入手数料 149億円
・金融収益 111億円
・トレーディング損益 12億円
*販管費 125億円
*営業利益 134億円
うち
・受入手数料 149億円
・金融収益 111億円
・トレーディング損益 12億円
*販管費 125億円
*営業利益 134億円
となっております。
(金融費用13億円は省略しているため、引き算しても合いません。)
ちなみに受入手数料のうち、株式が占めているのは132億円。その他は16億円となっています。今後、132億円の受入手数料を当てにせず、販管費等に変化がないと仮定すれば、
*営業収益 141億円
*営業利益 3億円
*営業利益 3億円
となり、損益トントンで利益が出なくなってしまいます。
もはやITがごくごく一般的となった中で、たいしたビジネスモデルでもないのに今まで儲けすぎていたという面もあるでしょう。
残された選択肢と株価からの想像
このチキンレースからは逃れられないとなると、もはや残された選択肢は多くありません。
顧客をかき集めて、コストを減らす。これしか残された手はないと思われます。顧客数、預かり資産残高の規模拡大を図り、信用取引の金利収入、投資信託の信託報酬を増やしていくというわけです。
ダークプール取引による収益やロボアドバイザーによる収益などはまだまだ全く当てにならないでしょう。そして、規模拡大のために業界上げての再編が十分に想定されるのです。
それにしても証券業界はまるで集団自殺を図っているかのようです。
ちなみに松井証券の株価推移は以下のとおりです。

株価は語る。でもいったい何を?
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![]() | 価格:2,640円 |

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